休暇制度とは?健康経営推進で導入したい休暇をまとめて一挙紹介
自社の健康経営や、従業員のウェルビーイングを実現するには、休暇制度の充実が欠かせません。しっかり休暇を取ることでワークライフバランスが維持できれば、仕事に対するモチベーションや企業へのロイヤルティの向上にもつながるでしょう。
そこで本記事では、経営者や人事担当者、労務担当者の方々に押さえていただきたい休暇制度について、これまで「ステップ」で掲載した休暇関連の記事の要点をピックアップしてご紹介します。休暇にまつわる疑問を一気に解消し、新たな休暇制度の導入や休暇制度の改善にお役立てください。
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目次[非表示]
- 1.産休(産前産後休業)とは?
- 1.1.産休を取得できる条件
- 1.2.産休の具体的な期間
- 1.3.産休中の給与や納付
- 1.4.出産に伴って受け取ることができる手当
- 2.育児休暇とは?
- 2.1.育児休暇と育児休業・産後パパ育休との違い
- 2.2.育児休暇を導入する際の注意点
- 2.3.企業が育児休暇を導入するメリット
- 3.看護休暇とは?
- 3.1.育児・介護休業法が制定された背景と改正のポイント
- 3.2.看護休暇の対象者
- 3.3.看護休暇の取得日数と給与の定め方
- 3.4.看護休暇で注意すべき点
- 4.介護休暇とは?
- 4.1.介護休暇を取得できる人と、取得の対象となる家族の範囲
- 4.2.介護休暇を取得できる単位と日数
- 4.3.介護休暇と介護休業の違い
- 4.4.介護休暇と介護休業を選択する際の目安
- 5.介護休暇において企業が注意すべきポイント
- 6.従業員が必要な休暇を心置きなく取れる社内環境を整えよう
産休(産前産後休業)とは?
産休とは、労働基準法第65条で規定されている出産・育児のための休暇です。正式名称は「産前産後休業」で、「産前休業」と「産後休業」に分かれます。
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産前休業
産前休業は、赤ちゃんを迎えるための準備期間として、出産前にとれる休暇のことです。取得は任意で、取得を希望する場合は事前に企業の担当者への申請が必要です。本人が産前休暇の取得を希望しなければ、出産の直前まで働いても法的な問題はありません。
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産後休業
産後休業は、出産を終えた母体の保護を目的とした休暇で、産後に取ることができます。妊娠・出産が女性の体に与える影響は大きく、産前の状態まで復調するには時間がかかります。産後に無理をすると後々の不調につながる可能性があるため、この期間はできるだけ体を休ませなくてはなりません。
そのため、妊婦は出産の翌日から8週間は、原則として就業することはできません。ただし、産後6週間が過ぎた後、女性が「働きたい」と希望して医師が「業務に就いても支障がない」と認めた場合は就業が可能です。
【参照】厚生労働省「労働基準法のあらまし(妊産婦等)」|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000796040.pd
産休を取得できる条件
産休は、働くすべての女性が利用できる権利です。就業期間や雇用形態にかかわらず、企業と雇用契約を結んで働いているすべての母親が取得することができます。正社員以外のパート社員、派遣社員、契約社員、アルバイトといった雇用形態でも、転職してすぐであっても取得は可能です。
妊娠・出産をする従業員がいたら産前は希望に応じて、産後は必ず産休を取得させるようにしてください。
産休の具体的な期間
産休は産前産後で、具体的な期間が設けられています。産休を取得できる期間は下記のとおりです。
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産前休業
原則として出産予定日の6週間前(42日間前)から産休取得が可能です。出産予定日は、最終月経開始日を0週0日としたときの40週0日目、つまり280日目とするのが一般的であり、妊婦は「妊娠34週」から産休を取得することができます。
なお、産前の体調がよければ、34週以降出産の前日まで勤務することが可能です。
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産後休業
産後休業は出産翌日から8週間(56日間)で、産後6週間は強制的な休業期間となります。6週目以降は、産休取得者の希望と医師の診断に応じて勤務が可能です。
休暇取得の期間については、妊娠がわかった段階で人事部や総務部といった担当部署に伝えるよう社内に周知しておき、会社所定の産後休業申請書に必要事項を記入して提出してもらうのが一般的です。
【参照】厚生労働省「働きながらお母さんになるあなたへ」|厚生労働省(2023年11月)
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001169781.pdf
産休中の給与や納付
自社で独自の規定を設けている一部の企業を除いて、休業中の給与の支払いは基本的にはありません。
一方、健康保険料、厚生年金保険料については、会社を通じて「産前産後休業取得者申出書」を提出することにより、産前産後休業開始月から終了日の翌日の属する月の前月(産前産後休業終了日が月の末日の場合は産前産後休業終了月)までの期間の支払いが免除されます。
ただし、住民税は前年の所得に応じて発生するため、納付しなければなりません。
出産に伴って受け取ることができる手当
出産時には、一時的に減少する収入をカバーするため、国や自治体からさまざまな手当が支給されます。下記は、出産に伴って受け取ることができる代表的な手当です。
<出産時の代表的な手当>
- 出産育児一時金
- 出産手当金
- 出生時育児休業給付金
- 育児休業給付金
- 出産・子育て応援交付金
【参照】こども家庭庁「妊婦・子育て家庭への伴走型相談支援と経済的支援の一体的実施(出産・子育て応援交付金)」|こども家庭庁(2024年1月)
https://www.cfa.go.jp/policies/shussan-kosodate
【参照】厚生労働省「すこやかな妊娠と出産のために」|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/boshi-hoken10/dl/01.pdf
【参照】マイナビ転職「産休・育休中、給料は出ない? もらえる給付金の計算方法・期間を解説」|株式会社マイナビ(2023年11月)
https://tenshoku.mynavi.jp/knowhow/caripedia/145/
【参照】厚生労働省「育児休業、産後パパ育休や介護休業をする方を経済的に支援します」|厚生労働省(2024年1月)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/pdf/ikuji_r02_01_04.pdf
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育児休暇とは?
育児休暇は、会社が独自に設けている育児のための休暇制度の総称です。従業員の育児と仕事の両立をサポートし、一定期間育児のみに集中できる環境を作ることが目的です。ここでは、育児休暇と育児休業との違いや期間、給付金、男性育休について解説します。
育児休暇と育児休業・産後パパ育休との違い
育児休暇と混同してしまう制度に、法律で定められた育児のための休暇である「育児休業」があります。また、2022年10月には「産後パパ育休」も制定されました。
育児休暇をよく理解するためには、育児休業との違いや産後パパ育休について把握することが大切です。
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育児休業
育児休業は、育児・介護休業法第2条にもとづく労働者の権利です。一般的に「育休」と呼ばれており、対象期間は「養育する子が一歳に達する日まで」です。保育所が見つからないなどの事情があれば、最長2歳まで認められます。
通常、母親の育休は子が1歳の誕生日を迎える前日までですが、パパ・ママがともに育児休業を取得する場合は、子供が1歳2ヵ月になるまで期間を延長できます。
育児休業は労働者の権利ですが、企業に義務は課されていません。企業は労働者に「取得できる制度の存在」を知らせるだけでよく、取得にあたっては従業員自身の申請が必要です。
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産後パパ育休
産後パパ育休(出生児育児休業)は、子の出生後8週間以内に4週間まで、2回に分割して取得できるパパ向けの育休制度です。企業は、制度に関する研修の実施や窓口の設置を通じて、パパ育休を取得しやすい環境を醸成することが望まれます。
また、子供が生まれた男性従業員に対して、育休取得の権利があること、および取得意思の有無を確認することも企業の役割です。
育児休暇を導入する際の注意点
育児休暇を導入する際には、企業が気をつけるべきポイントもあります。主な注意点は、下記の3つです。
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全社に周知する
育児休暇の導入について、全従業員に取得の権利があることを周知しましょう。情報が行き届いていないと、制度を知らずに利用できなかった従業員が現れるなど、せっかくの制度が不公平となり、不満につながりかねないためです。
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復帰しやすい環境を醸成する
育児休業に加えて育児休暇を取ること、またそれによってサポートする人の負担が増えることに不満を持つ従業員がいるかもしれません。企業はそうした反応を放置せず、真摯に説明して理解を得る必要があります。休暇の取得者が心置きなく復帰できる環境づくりに努めましょう。
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相談窓口を設ける
育児休暇中の疑問や質問をすぐにくみ上げ、適切な対応ができるように、総合的な窓口を設けましょう。給与のことや手当のこと、復帰後のことなどをフレキシブルに相談できないと、従業員は安心して休暇を取ることができません。
企業が育児休暇を導入するメリット
企業の義務である育児休業とは別に育児休暇を導入すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。企業にとってのメリットを2つご紹介します。
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自社のイメージ向上
育児休暇を導入すると、「ワークライフバランスへの理解がある」「女性の働きやすさや男性の育児に対する価値観の多様化に対応している企業」といった良いイメージが定着します。自社のイメージが社会的に向上すると、事業や採用に好影響が生まれるかもしれません。
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人材の流出が防げる
育児休暇があると、産後の家事や、育児の両立に悩む女性に心身の余裕が生まれることが期待できます。育児休暇は、離職を防ぐ効果もあるといえるでしょう。
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看護休暇とは?
看護休暇は、就学前の子供が病気やケガをした際に、看護をするための休暇です。幼い子供を育てている人が、仕事と子育てを両立できるよう、支援することを目的としています。
育児・介護休業法が制定された背景と改正のポイント
看護休暇は、育児・介護休業法によって定められた休暇です。国は、下記に挙げる4つの背景を理由に同法を定めました。
<育児・介護休業法が制定された背景>
- 国の少子化対策のため
- 女性雇用の確保と活躍の場を拡大するため
- 超高齢社会における介護対策のため
- 従業員の雇用継続・雇用の安定化を目指すため
2021年には、同法で定められた看護休暇と介護休暇が改正され、1日単位・半日単位だけでなく、時間単位でも休暇が取得できるようになっています。
看護休暇の対象者
看護休暇は、小学校就学前の子供がいる労働者が取得対象(※)です。雇用形態にかかわらず取得でき、配偶者が専業主婦(夫)であっても問題ありません。
なお、育児・介護休業法で規定されている「就学前」の範囲を、企業が独自に「就学後」まで拡大することも可能です。こうした独自の取り組みは、対外的な企業の評価を高め、従業員のロイヤルティ向上につながることが期待できます。
(※)労使協定を締結している日雇労働者、入社6ヵ月未満の労働者、1週間の所定労働日数が2日以下の労働者は取得対象外
【参照】厚生労働省「育児・介護休業等に関する規則の規定例」|厚生労働省(2024年1月)
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/04.pdf
看護休暇の取得日数と給与の定め方
看護休暇を管理するには、取得日数や給与についてのルールを把握することが大切です。取得日数と給与の定め方は、下記を参考にしてください。
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取得日数
看護休暇の取得日数は、小学校就学前の子供1人につき1年間に最大5日です。就学前の子供が2人以上の場合は、1年間に最大10日となります。なお、複数人の子供のうち、1人の看護で10日取得することも可能です。
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給与
看護休暇における有給・無給の判断は、企業に委ねられています。ただし、看護休暇は法律で定められた休暇であるため、取得することによって不利になるような扱いをしてはいけません。有給であれば従業員の満足度が高まるため、両立支援等助成金制度などの助成金を活用して負担の軽減を図るのもひとつの方法です。
看護休暇で注意すべき点
看護休暇制度を設計する際には、注意すべき点があります。主に、下記のような4つの注意点があります。
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労働者は希望どおりに看護休暇を取得できる
労働者が看護休暇を希望する時季が事業運営を妨げる場合でも、ほかの時季に休暇を変更できる「時季変更権」は行使できません。看護休暇は子供の急な病気やケガに対応するための制度であることを念頭に置き、希望どおりに取得できるようにしましょう。
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労働者の勤怠管理に注意する
看護休暇は時間単位で取得できますが、取得時間数が合計で1日の所定労働時間に相当する場合は、1日分の看護休暇の取得として扱われます。また、1日の所定労働時間を1時間単位としていない場合は、端数を繰り上げた時間数を所定労働時間として扱います。
従業員の勤怠管理を行う際は、上記の点に注意しておきましょう。
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看護休暇の内容を就業規則に記載する
看護休暇導入にあたっては、法律で規定されている要件を踏まえた内容を就業規則に記載する必要があります。就業規則への記載がないと、従業員も自社の看護休暇がどのような内容になっているかの判断がつきません。
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時間単位で休暇を取得する際は、所定労働時間を超えないよう注意する
時間単位で休暇を取得する際、休暇を取得できる時間は、所定労働時間数未満でなければなりません。所定労働時間が8時間の日に、時間単位の休暇が取得出来るのは7時間までです。
【参照】秋田労働局雇用環境・均等室「子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得について」|厚生労働省
https://jsite.mhlw.go.jp/akita-roudoukyoku/content/contents/000743178.pdf
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介護休暇とは?
介護休暇は、家族の介護を行う人のための休暇です。介護休暇を利用すると、病気やケガ、身体上あるいは精神上の障害などによって、家族が2週間以上の常時介護を必要とする状態にあるとき、短期の休みを取得できます。
なお、介護休暇中の従業員は労務を提供していないため、会社が給与を支払う義務はありません。ただし、年次有給休暇を活用するなど有給扱いにし、従業員の満足度を高めることは可能です。
ここでは、介護休暇の取得方法や、介護休業との違いなどについて見ていきましょう。
介護休暇を取得できる人と、取得の対象となる家族の範囲
介護休暇を取得できるのは、下記に挙げる家族を介護する労働者です。雇用形態や性別、要介護者との同居の有無、要介護者の要介護認定の有無にかかわらず、介護休暇を取得できます。
<介護休暇取得の対象となる家族>
- 配偶者(事実婚を含む)
- 父母
- 子
- 配偶者の父母
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 孫
なお、日雇労働者は、介護休暇の対象にはなりません。労使協定を締結している場合、入社6ヵ月未満の労働者や、1週間の所定労働日数が2日以下の労働者も対象外となることがあります。
介護休暇を取得できる単位と日数
介護休暇は時間単位、もしくは1日単位で取得できます。介護休暇を取得できる具体的な日数は、下記のとおりです。
<介護休暇を取得できる日数>
- 対象家族が1人の場合:年5日
- 対象家族が2人以上いる場合:年10日
介護休暇は、通院の付き添いや入浴・排せつの介助といったことだけでなく、買い物の代行や、役所などへの提出書類を代理で書くといった用途での短時間の取得も可能です。
要介護者が遠方の場合や、入院の付き添いなどの際には、まとめて取得しても問題ありません。
介護休暇と介護休業の違い
介護休業は、要介護状態の家族のサポートをするために、数週間や数ヵ月といった長期休暇を申請・取得できる制度です。介護休業も介護休暇も同じく育児・介護休業法に定められた労働者の権利ですが、取得期間や対象の従業員、申請方法などに違いがあります。それぞれの特徴の違いは下記のとおりです。
■介護休暇と介護休業の特徴の違い
介護休暇 |
介護休業 |
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取得期間 |
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取得できない従業員 |
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申請方法 |
口頭での申請や書面提出(取得当日、口頭での申請でも構わない) |
書面提出(休業開始予定日の2週間前までに事業主に申出) |
介護休暇と介護休業を選択する際の目安
介護休暇と介護休業は、どちらを選択するべきか迷うケースもあるかもしれません。それぞれ取得できる条件や期間などは異なるため、介護内容や介護の段階、必要な所要時間などによって使い分けましょう。
<介護休暇が向いているケース>
- 要介護者の突発的な出来事への対応や、介護保険の手続きなど
- 病院の送迎・介護保険の認定調査といった短時間で済む用事
<介護休業が向いているケース>
- 介護施設に入居するための見学や面談、審査、移転手続きなどの準備期間
- 遠距離に住んでいる要介護者を自宅に呼び寄せるにあたり、リフォームや要介護者の自宅の整理などに時間を要するとき
- 要介護者のみとりが近づいているとき
介護休暇において企業が注意すべきポイント
介護休暇の申請を受けた企業には、注意すべきポイントもあります。従業員から介護休暇の申請があった際、企業の担当者の方は、下記のポイントも押さえておきましょう。
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介護休暇は義務であり、申請は拒否できない
介護休暇がまだ仕組み化されていなくても、就業規則に明文化されていなくても、希望者がいれば取得させなければなりません。また、介護休暇を理由として、従業員に不利な措置をとることも禁じられています。
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選択的措置を講じる必要がある
介護休暇の申請があったら、利用開始から3年以上のあいだに2回以上利用できる選択的措置を企業は講じなくてはなりません。選択的措置とは、介護休暇に伴って従業員の働き方を変更する措置などを指します。例えば、始業・終業時間の繰り上げ・繰り下げや短時間勤務、フレックスタイム制度の利用などが挙げられます。
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介護する従業員には、所定労働時間・時間外労働などの制限がある
介護休暇を申請した従業員には、残業のような時間外労働をさせることができません。
【おすすめ参考記事】
従業員が必要な休暇を心置きなく取れる社内環境を整えよう
休暇制度の充実は、従業員がライフスタイルに合わせて長く働く上で欠かせない取り組みです。制度の拡充をはじめ、休暇を取りやすい環境づくりにも注力しましょう。
「マイナビ健康経営」は、人と組織の「ウェルネス(健康)」をさまざまなサービスでサポートしています。休暇制度の課題についてはもちろん、従業員の心身の健康維持をお考えの際には、お気軽に悩みをお聞かせください。
<監修者> |
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