ウェルビーイング経営とは?必要な背景やメリット、注意点などを解説
ウェルビーイング経営とは?必要な背景やメリット、注意点などを解説
近年、ウェルビーイング(Well-being)経営が世界のスタンダードになりつつあります。 従業員の心身が健康であり、社会的にも満たされた状態にあることは、企業活動にも良い影響を与えるという考えのもと、その取り組みは世界に広がっています。
本記事では、ウェルビーイング経営の概要から求められている背景、ウェルビーイング経営の必要要素まで詳しく解説。ウェルビーイング経営のメリットや注意点、具体的な取り組み内容も併せて紹介します。
目次[非表示]
- 1.ウェルビーイング経営とは?必要な背景やメリット、注意点などを解説
- 2.ウェルビーイング経営が求められている背景
- 2.1.国内総生産(GDP)だけでは成功は測れない
- 2.2.SDGsへの意識の高まり
- 3.ウェルビーイング経営の効果を発揮する3つのポイント
- 4.ウェルビーイング経営のキーとなるPERMAモデル
- 5.ウェルビーイング経営のメリット
- 5.1.従業員の満足度が向上する
- 5.2.生産性が向上する
- 5.3.人材の離職防止や人材獲得につながる
- 5.4.企業価値が向上する
- 6.ウェルビーイング経営に取り組む上での注意点
- 7.ウェルビーイング経営の具体的な取り組み内容
- 7.1.従業員のメンタルヘルスをサポートする
- 7.2.柔軟な働き方を推進する
- 7.3.職場のコミュニケーションを活性化する
- 7.4.従業員満足度調査(ES調査)を導入する
- 7.5.福利厚生を充実化する
- 7.6.デジタルツールを積極的に活用する
- 8.「マイナビ健康経営」は、人と組織をポジティブにするサービスを提供しています
ウェルビーイング経営が日本でも浸透中
2021年3月、株式会社日経新聞社は公益財団法人Well-being for Planet Earth参画企業とともに「日本版Well-being Initiative」を創設しました。
同法人設立の主な目的は、ウェルビーイングを測定する新指標開発やウェルビーイング経営の推進、政府・国際機関への提言、ウェルビーイングをSDGsに続く世界的な政策目標に掲げること。
これは、ウェルビーイング経営に関する知見を集約・共有するという意欲的な取り組みであり、日本においてもウェルビーイング経営が浸透する大きなきっかけとなっています。
それでは、そもそもウェルビーイング経営とはどのようなものを指すのでしょうか。まずは、ウェルビーイングと、ウェルビーイング経営の定義を解説します。
【参照】株式会社日本経済新聞社「日本版Well-being Initiative始動」|株式会社 PR TIMES(2021年3月)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000336.000011115.html
ウェルビーイング:身体・精神・社会的に満たされた状態
世界保健機関(WHO)憲章前文において、ウェルビーイングとは「身体・精神・社会的に満たされた状態」と定義されています。日本における健康に関する取り組みといえば、健診受診率の向上や生活習慣改善、メンタルヘルス対策などにより、従業員の心身の健康維持・増進を目指す「健康経営」が浸透しています。
健康経営は、「人という資源を資本化し、企業が成長することで社会の発展に寄与すること」という考え方に基づいており、「社会的にも満たされた状態」であることを目指すウェルビーイングと共通しています。両者が目指すゴールに大きな違いはなく、健康経営を推進する中でウェルビーイングを重点的に取り組む否かを判断していくと、より良い経営手法となることが期待できます。
【参照】公益社団法人日本WHO協会「世界保健機関(WHO)憲章とは」|公益社団法人日本WHO協会
https://japan-who.or.jp/about/who-what/charter/
【参照】こんな会社で働きたい「健康経営とは人を資本とする企業づくり」|クロスメディアグループ株式会社(2023年6月)
https://good-companies.jp/sustainableinfo/renaissance/
ウェルビーイング経営:企業に関わる全ての人の幸せを目指す経営
ウェルビーイング経営は、従業員一人ひとりの仕事への意欲やエンゲージメントを高める手法です。また、企業に関わる全ての人の幸せを目指す経営も意味しています。健康経営や働き方改革が推進されている最中、その先にある従業員を筆頭としたさまざまな人の幸福に焦点をあてているのです。
ウェルビーイング経営は、自社の利益を追求するだけではなく、経営に関わる全ての人の幸せを追求する点が、新しい経営の在り方といえます。
ウェルビーイング経営が求められている背景
ウェルビーイング経営は、なぜ日本でも注目されるようになったのでしょうか。ウェルビーイング経営が求められている背景としては、下記の2点が挙げられます。
国内総生産(GDP)だけでは成功は測れない
国内総生産(GDP)は、これまで国の成功を測る指標として重要視されていました。しかし、国内総生産は、国の経済規模を測るための指標です。例えば、国内総生産が成長していたとしても、その成長の過程で自然環境の破壊が起き、病気に苦しむ人が増えてしまっては、人々の幸せにはつながりません。
そのほかにも、過労死や所得格差の問題など、国内総生産だけでは国の幸福度は見えてこないのが実情です。経済規模だけを注視するのではなく、人々の幸せを測るためにウェルビーイング経営は注目を集めているのです。
SDGsへの意識の高まり
ウェルビーイングは、2015年の国際連合サミットでSDGsのひとつとして採択され、国際的にも広く関心を集めるようになりました。SDGsは、2030年までに持続可能でより良い世界を目指すために掲げられた国際的な目標であり、貧困や飢餓の解決、地球環境の保護といった17のゴールで構成されています。
その中の3つ目のゴールである「全ての人に健康と福祉を(GOOD HEALTH AND WELL-BEING)」で、ウェルビーイングは言及されています。個人と社会、そして地球全体が満たされた状態を追求するSDGsの一部として、ウェルビーイングも重要視されているのです。
【参照】外務省「JAPAN SDGs Action Platform」|外務省(2023年7月)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/index.html
ウェルビーイング経営の効果を発揮する3つのポイント
ウェルビーイング経営の効果を発揮するためには、重要な3つのポイントがあります。それは「定義」と「具体化」、そして「可視化」です。
まずは、ウェルビーイング経営に取り組む目的を社内に示し、自社に合ったウェルビーイング経営を定義する必要があります。そして、その定義を社内に浸透させた上で、それらの定義に基づいた施策や社内規定を作成して具体化します。
次に必要なことは、取り組んだ結果を可視化することです。可能な限り数値に基づいた成果観測を行えると理想的でしょう。
ウェルビーイング経営のキーとなるPERMAモデル
ウェルビーイング経営は従業員を含めた全ての人々を幸福な状態にすることを目的としています。
それでは従業員の「幸福な状態」とはどのような状態を指すのでしょうか。幸福に関する理論の代表としては、「ポジティブ心理学の父」として知られるペンシルベニア大学のマーティン・セリグマン博士の、「PERMAモデル」があります。
PERMAモデルにおいて、「人々が持続的な幸福を感じるために必要な要素」としては、下記の5つが挙げられています。
<人々が持続的な幸福を感じるために必要な要素>
- P(Positive emotion):喜び・平安・希望・畏怖などの感情を持つ、感じる
- E(Engagement):活動や世界そのものに深くかかわる
- R(Relationship):愛情・サポート・理解のある人間関係の中にいる
- M(Meaning):目的に適う、自分より大きな何かに奉仕するという感覚を持つ
- A(Accomplishment):熟練・遂行能力をもっているという感覚を持つ
PERMAモデルにおいては、上記の5つの要素を高めることで、「持続的な幸福」の実現は可能になると提言されています。これらの要素は、ウェルビーイング経営においても重要なピースとなると捉えていいでしょう。
【出典】PERMA51「ポジティブ心理学とPERMA」|PERMA25JAPAN
https://perma25japan.com/about
ウェルビーイング経営のメリット
ウェルビーイング経営を推進すると、企業にはどのようなメリットが生まれるのでしょうか。具体的なメリットを4つご紹介します。
従業員の満足度が向上する
ウェルビーイング経営を推進すると、その過程で働きやすい環境が整うはずです。自ずと職場の雰囲気も明るくなり、従業員のストレス軽減に期待がもてます。仕事に対するモチベーションやパフォーマンスがアップすれば従業員の満足度も向上し、企業へのエンゲージメントも高まっていくでしょう。
生産性が向上する
心身ともに健康で働くことができる環境であれば、欠勤や休職をする従業員も減り、企業の生産性の向上が期待できます。また、アメリカ・イリノイ大学名誉教授のエド・ディーナー博士らによると、幸福感の高い人は、そうでない人と比較して生産性が31%も高いといった研究結果が報告されています。ウェルビーイング経営の推進は、生産性の向上にもつながっていくでしょう。生産性が向上すれば人件費の削減や従業員医療費の削減につながります。ウェルビーイング経営は、経営コストの削減にも寄与するでしょう。
【参照】専修大学商学研究所「幸福経営に関する理論と調査結果に関する研究」|専修大学(2022年4月)
https://senshu-u.repo.nii.ac.jp/records/12552
人材の離職防止や人材獲得につながる
ウェルビーイング経営によって従業員の幸福度やエンゲージメントが向上すれば、自社への帰属意識が高まり、自然と離職防止の効果が期待できます。
また、ウェルビーイング経営を実践すれば企業のブランドイメージ向上に期待がもてるため、優秀な人材を獲得しやすくなるはずです。
企業価値が向上する
ウェルビーイングが高い従業員が増えれば、売上や生産性、創造性も高まっていく傾向があります。ウェルビーイング経営を推進していくと、多数の従業員の成長によって企業全体の価値も向上していくことに期待が持てます。
ウェルビーイング経営に取り組む上での注意点
ウェルビーイング経営を推進するにあたっては注意点もあります。経営層が特に懸念するのは、「利益目標を追求することが難しくなる」という点ではないでしょうか。確かに、ウェルビーイング経営を推進すると、短期的な視点では利益が減る可能性がないとはいえません。
ただし、前述したように、ウェルビーイング経営には従業員の生産性の向上や人材獲得といったメリットも多くあります。中長期的な視点で捉えると、ウェルビーイング経営は結果として大きな利益向上につながると考えられています。
ウェルビーイング経営を推進するにあたっては、短期的な視点ではなく、中長期的な視点で取り組むことが大切といえるのです。
ウェルビーイング経営の具体的な取り組み内容
続いては、ウェルビーイング経営に取り組むにあたって、必要な対策を具体的に紹介します。なお、全てを一度に実現させようとはせず、慎重に取り組んでいくことをおすすめします。ウェルビーイング経営は、中長期的な視点で捉えてください。
【参考記事】
従業員のメンタルヘルスをサポートする
ウェルビーイング経営において第一に取り組むべき対策は、従業員のメンタルヘルスや労働環境の改善でしょう。
具体的には、従業員のストレスにつながる過度な労働時間の削減や、有給などの休暇申請を行いやすい職場の風土づくりが挙げられます。また、産業医との面談の実施なども定期的に行えると理想的です。これらの取り組みを推進すれば、前述のPERMAモデルにおける「Positive emotion(ポジティブな明るい感情)」の改善に期待が持てます。
柔軟な働き方を推進する
ウェルビーイング経営の推進には、労働環境の改善のほかに、場所や時間にとらわれず働くことができる「柔軟な働き方」を促進していくこともおすすめできます。
柔軟な働き方の代表格といえるテレワークを推進する際は、インフラや制度設計も必要となるため、勤怠管理システムや情報共有ツールといったツールの導入を積極的に検討する必要があるでしょう。
職場のコミュニケーションを活性化する
職場内の人間関係がネガティブな状態だと、仕事の生産性が低下し、従業員のストレス増加につながります。その対策としては、職場のコミュニケーションを活性化させ、風通しを良くすることが重要です。従業員同士が手軽にコミュニケーションできるチャットツールや、従業員専用の社内SNSといったツールを導入することも効果的といえます。
従業員満足度調査(ES調査)を導入する
ウェルビーイング経営を推進するにあたっては、従業員満足度を調査することも重要です。具体的には従業員満足度調査(ES調査)を導入してみてはいかがでしょうか。従業員満足度調査を行えば、従業員が自社に対して何を求め、どのような不満を抱いているかを可視化することができます。
なお、従業員満足度だけではなく、従業員が満足・不満足を持つようになる過程の「従業員体験」に着目した、従業員エクスペリエンス(EX)の改善も昨今は注目されています。従業員の経験を正しく把握した上でウェルビーイング経営に取り組めば、より効果的な施策のアイディアも生まれるはずです。
福利厚生を充実化する
従業員のウェルビーイング向上には、プライベートの充実をサポートすることも大切です。運動やレジャー、旅行の援助といった福利厚生の充実も重要となります。
例えば、フィットネスクラブの割引のほか、美術館や映画鑑賞券の無料配布、旅行時の宿泊料金の補助といったレジャーにおける福利厚生の充実にも取り組んでみてはいかがでしょうか。
デジタルツールを積極的に活用する
従業員間におけるコミュニケーション活性化や、従業員の体験のサーベイを行う上では、デジタルツールの導入は欠かせないといえます。昨今は、従業員同士で気軽にお礼を伝えることのできるツールや、従業員がその日の気分や状態を気軽に入力することのできるツールなども、各企業で普及しています。
また、それらのデジタルツールに蓄積されたデータは、ウェルビーイング経営の適切な対策を検討する上で重要な情報となります。自社に足りない要素は何かを検討した上で、デジタルツールも上手に活用してみてください。
「マイナビ健康経営」は、人と組織をポジティブにするサービスを提供しています
ウェルビーイング経営は、企業にも従業員もさまざまなメリットをもたらす、これからの時代に必要な経営手法です。短期的な効果を求めるのではなく中長期的な視点で捉えて、じっくりと取り組んでいきましょう。
「マイナビ健康経営」は、人と組織の「ウェルネス(健康)」を総合的なサービスでサポートしています。従業員の健康促進や生産性向上、人材定着につながるサービスとして「ウェルネスサポート」もご用意しています。
従業員の心身の健康向上、そしてウェルビーイング経営の導入を検討している際には、お気軽にお悩みをお聞かせください。ウェルビーイング経営のスタートの時点から、「マイナビ健康経営」は手厚く伴走します。