熱中症対策の重要性とは?企業に必要な対策と職場での応急措置を解説
連日の猛暑が続く夏において、見直しておきたいのが職場の熱中症対策です。熱中症は屋外での業務だけでなく、適切な温度管理がなされていない室内でも起こることがあります。対処が遅れると重大な健康被害につながる可能性もあるため、どの企業も注意が必要です。
従業員が勤務中に熱中症にかからないよう配慮することは企業の義務であり、万全の対策をとる必要があるでしょう。そこで本記事では、企業が講じるべき熱中症対策を詳しく紹介。従業員が熱中症を発症した場合の応急措置や企業の対策事例についても解説します。
目次[非表示]
- 1.熱中症とは、体の熱を外に放出できないことによって起こる症状の総称
- 2.職場での熱中症死傷者数
- 3.熱中症リスクを判断するWBGT値
- 3.1.WBGT値の使用方法
- 4.熱中症対策は企業の安全配慮義務のひとつ
- 5.職場での熱中症を予防する方法
- 5.1.WBGT値の低減対策を行う
- 5.2.休憩場所を設置する
- 5.3.従業員の作業管理を行う
- 5.4.従業員の健康管理を行う
- 5.5.熱中症予防対策の体制を構築する
- 6.企業が熱中症対策を行うメリット
- 6.1.従業員の健康と安全を確保できる
- 6.2.生産性が向上する
- 6.3.企業のイメージが向上する
- 6.4.法的リスクの低下につながる
- 7.職場で熱中症が発生した際の応急措置
- 7.1.1. 意識を確認する
- 7.2.2. 応急措置をする
- 7.3.3. 体を冷やす
- 7.4.4. 水分と塩分を補給する
- 8.企業の熱中症対策事例
- 8.1.建設業A社の事例:オリジナルファン付き作業服を現場に提供
- 8.2.建設・卸売業B社の事例:最新ツールの活用とコミュニケーションで熱中症を予防
- 8.3.塗装工事業C社の事例:階層によるWBGT値の測定とSNSの活用
- 9.WBGT値の測定などを活用した熱中症対策で、従業員の健康を守ろう
熱中症とは、体の熱を外に放出できないことによって起こる症状の総称
熱中症は、気温や湿度が高い環境に体が適応できないことによって起こる症状の総称です。
熱中症を誘発する原因は、大きく3つあるといわれています。まずは熱中症を誘発する主な原因を押さえておきましょう。
<熱中症を誘発する主な原因>
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環境:気温が高い、湿度が高い、日差しが強いといった環境条件によって熱中症が起こることがあります。
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体の状態:二日酔いや寝不足などの体調不良、低栄養状態、脱水状態など、体の状態によっても熱中症は起こります。
- 行動:長時間に及ぶ真夏の屋外作業や、激しい運動なども熱中症の原因となります。
蒸し暑い中で運動や活動をしていると、体内で発生した熱をうまく外に逃がすことができなくなることがあります。そのまま体温が上昇すると臓器の機能低下や、血流の滞りによって体の調子が悪くなり、熱中症が引き起こされます。熱中症の代表的な症状は、めまいや立ちくらみ、顔のほてり、筋肉痛や筋肉のけいれん、大量に汗をかく、あるいは全く汗をかかない、頭痛、吐き気、倦怠感、高体温などです。
呼びかけに反応しない、おかしな返答をする、まっすぐ歩けない、自分で上手に水分補給ができないなどの場合には、すぐに救急車を呼びましょう。初動が遅れると命に危険が及ぶこともあるため、「夏にはよくあること」といった軽視や、「休めば治る」といった誤った認識にもとづく行動は禁物です。
【参照】「熱中症ゼロへ」プロジェクト公式サイト「熱中症の原因・なりやすい環境や暑さ指数(WBGT)について知ろう」|日本気象協会推進「熱中症ゼロへ」プロジェクト
https://www.netsuzero.jp/learning/le11
職場での熱中症死傷者数
厚生労働省がまとめた「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」によれば、2023年の熱中症死傷者(死亡・休業4日以上)は1,106人で、前年比で279人、34%の増加となりました。
熱中症死傷者全体の約4割が建設業と製造業であり、死亡者数31人の内、建設業は12人、警備業は6人を占めています。
また、厚生労働省によると、死亡事例の多くが後述するWBGT値(暑さ指数)を把握せず、必要な労働衛生教育を行っていなかったことも報告されています。
労働衛生教育とは、職場の熱中症の予防に向けて事業者が実施すべき事項のひとつです。労働者が高温多湿な作業場などで業務に従事する場合、責任者の適切な作業管理に加えて本人の健康管理が重要であることから、熱中症の症状や予防方法、応急処置などについては正しく教育しなくてはなりません。
【参照】厚生労働省「令和5年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」|厚生労働省(2024年5月)
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000900487.pdf
熱中症リスクを判断するWBGT値
WBGT値とは、「気温」「湿度」「日射」「気流」の4つの要素を取り入れた温度の指標です。WBGT値は、労働環境や運動環境の指針として有効であるとされ、ISO等で国際的に規格化されて世界中で活用されています。そのため、熱中症リスクを判断する上でも重要な指数です。
WBGT値の単位は気温と同じ「℃」で表記します。なお、前述のとおりWBGT値における「℃」は、気温以外にも、湿度、日射、気流などを総合的に評価しています。WBGT値は、乾球温度計、湿球温度計、黒球温度計で計測した数値をもとに算出され、「蒸し暑さ」を1つの単位で総合的に判断できる単位です。
WBGT値の使用方法
WBGT値のような指標がないと、「このくらいの暑さならおそらく大丈夫」「去年まで誰も熱中症になっていないから、今年も平気なはず」といった経験則や勘に頼った判断をする可能性があります。
また、熱中症リスクに大きな影響を与える湿度を見落とし、気温だけで判断した結果、熱中症の対処が遅れることもあるでしょう。
しかし、WBGT値を指標として利用すれば、熱中症のリスクが総合的に判断でき、予防意識を高めて行動することができます。WBGT値は、下記の計算式で求められます。
<WBGT値の計算式>
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日射がない(日陰)場合
WBGT値=0.7×自然湿球温度+0.3×黒球温度
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日射がある(日向)場合
WBGT値=0.7×自然湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×気温(乾球温度)
WBGT値を求める際には、特有な温度の計測が必要です。それぞれの温度の概要は下記のとおりです。
<WBGT値の測定に必要な温度の概要>
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自然湿球温度:皮膚の汗が蒸発するときに感じる涼しさ度合いを表す温度です。水で湿らせたガーゼを温度計の球部に巻いて観測します。
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黒球温度:弱風時の日向での体感温度と相関がある温度です。黒色に塗装された薄い銅板の球の中心に温度計を入れて観測します。
- 気温(乾球温度):日常用語で頻繁に使われる温度です。通常の温度計を使ってそのまま観測します。
なお、熱中症リスクを考える際には、作業着の素材や着方が作業者に与える影響も加味する必要がある点には注意してください。そこで、一般的な作業服やつなぎ以外を着用する場合は、上記で算出されたWBGT値に補正値を加えます。
厚生労働省では、補正値を加えたWBGT値に作業の身体強度や、暑さへの慣れの有無を加味して、熱中症の危険度がほぼないことを示す「WBGT基準値」を設定しています。
衣類の組み合わせによりWBGT値に加えるべき補正値と、身体作業強度等に応じたWBGT基準値は、厚生労働省のサイトを参照してください。
【参照】厚生労働省「職場のあんぜんサイト」|厚生労働省
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo89_1.html
熱中症対策は企業の安全配慮義務のひとつ
企業は、労働契約法第5条にもとづき、従業員の健康と安全に配慮する「安全配慮義務」を負います。具体的には、室内・作業環境の快適化や、機器のメンテナンスなどを行う「職場環境配慮義務」と、健康診断の実施や労働条件の適正化といった「健康配慮義務」があり、熱中症対策も安全配慮義務のひとつです。
労働契約法に罰則の記載はないものの、安全配慮義務を果たさずに労災と認定されれば、民法上の損害賠償責任を問われる可能性があります。そのため、常時50人以上の従業員を雇用する事業場は、従業員数に応じて衛生管理者を設定しなければなりません。
衛生管理者は国家資格であり、労働安全衛生法にもとづいて労働者の健康障害を防止する活動を行います。
【参照】厚生労働省「労働契約法のあらまし」|厚生労働省(2012年12月)
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/dl/leaf.pdf
【参照】厚生労働省「衛生管理者について教えて下さい。」|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/faq/5.html
熱中症が労災認定の対象となるケース
熱中症は、一定の要件を満たした場合に労災として認定されます。労災と認定される要件は下記のとおりです。
<熱中症が労災認定となる一般的認定要件>
- 業務上の突発的またはその発生状態を時間的、場所的に明確にしうる原因が存在すること
- 原因の性質や体に作用した部位、災害発生後発病までの時間的間隔などから災害と疾病とのあいだに因果関係が認められること
- 業務に起因しないほかの原因により発病(または悪化)したものでないこと
<熱中症が労災認定となる医学的診断要件>
- 作業条件や温湿度条件等の把握
- 一般症状の視診(痙攣、意識障害等)や体温の測定
- 作業中に発生した頭蓋内出血や脳貧血、てんかん等による意識障害等との鑑別診断
なお、業務と熱中症に因果関係があることが労災認定の要件となるため、持病の悪化や自宅環境といった個別の要因が影響している場合は、労災とならない可能性があります。
【参照】公益財団法人労災保険情報センター「問46」|公益財団法人労災保険情報センター
https://www.rousai-ric.or.jp/Portals/0/images/under/faq/new046_02.pdf
職場で熱中症に罹患するリスクがある労働者
職場における熱中症を予防するためには、熱中症リスクが高い労働者の条件を知ることも重要です。職場の担当者は、下記に紹介するリスクを押さえて対策を講じましょう。
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高温多湿な環境で働いている
直射日光や照り返しがある、冷房がない、熱を遮る遮蔽物がないなど、高温多湿な作業場はWBGT基準値を超えるおそれがあります。
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体を動かす仕事をしている
体への負荷が高い作業や、長時間連続での作業は熱中症を招きかねません。特に、梅雨明けで急に蒸し暑さが増したときなど、従業員の体が暑さに慣れていない時期は注意が必要です。
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服装や水分補給を軽視している
通気性や透湿性の悪い衣服、特殊な化学防護服を着ているときは、熱中症リスクが高まります。また、水分・塩分の摂取を軽視することも危険です。
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慢性疾患を持っている
糖尿病や高血圧症、心疾患、腎不全、精神・神経関係の疾患といった慢性的な疾患は、熱中症のリスクにもなります。
職場での熱中症を予防する方法
ここからは、職場での熱中症を予防するための対策をご紹介します。熱中症対策を進める際は、具体的にどのようなことを行えばいいのか、確認していきましょう。
WBGT値の低減対策を行う
まずは、WBGT指数計を用いてWBGT値を測定し、現場環境の現状を評価しましょう。測定値が基準値を超える場合は、冷房や熱遮蔽板の設置、身体作業強度にもとづく作業内容の調整、作業場所の変更などによってWBGT値の低減を図ってください。
休憩場所を設置する
高温多湿な作業場の近くには、冷房を備えた休憩場所や、日差しを遮ることができる休憩場所を設けましょう。休憩場所には冷たいおしぼりや水、シャワーなど、体を冷やせるグッズを常備しておくとより効果的です。
その際、水分だけでなく塩分も補給できる飲料水などを備え付けおくと、より熱中症対策につながります。
従業員の作業管理を行う
熱中症対策には現場環境の整備だけでなく、従業員の作業を適切に管理することも重要となります。熱中症対策において管理しておくべき作業内容は、下記のとおりです。
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作業時間の短縮
高温多湿な作業場では、連続作業時間を短縮するため、定期的な休止・休憩時間を設けましょう。現場の環境が厳しいときは、予定外でも休憩を取るようにしてください。
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暑熱順化への留意
梅雨から夏期への季節の移行期などは、従業員の体が暑さに慣れていないことも想定されます。この時期は、暑熱順化が必要であることに留意して監視をします。
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水分・塩分の摂取
夏季は、自覚がないまま脱水症状に至ることもあります。そのため、従業員が定期的に水分・塩分を摂取できるよう配慮します。
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服装のチェック
熱を吸収する服装は避け、通気性・透湿性の良い服装を推奨しましょう。化学防護服を着用する場合などは休憩頻度を増やし、休憩中は防護服を脱ぐように指導するとより安全です。
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頻繁な巡視の実施
巡視は、熱中症の兆候を早期に発見してすみやかな措置を講じる上で重要です。夏季は特に、巡視を頻繁に行いましょう。
従業員の健康管理を行う
慢性疾患があると熱中症リスクが高まるため、熱中症対策をする際は、健康診断の所見にもとづく就業場所の選定や、作業の変更などを行うことも重要です。
また、正しい健康習慣が熱中症予防につながることを平時から従業員に伝え、睡眠や食事といった生活習慣についても指導するとより効果が期待できます。作業開始前には、毎回必ず従業員の健康状態の確認も行いましょう。
熱中症予防対策の体制を構築する
熱中症予防に向けた体制の構築も重要です。事業者、衛生管理者、産業医などで責任体制を構築し、熱中症予防対策を検討しましょう。
作業者自身に対策をさせる場合には、熱中症に関する教育研修を受けた者を熱中症予防管理者とし、適切な教育を行ってください。
企業が熱中症対策を行うメリット
企業が正しい熱中症対策を導入することには、企業としての義務を果たすだけでなく、企業の価値に良い影響を与えることが期待できます。ここでは、企業が熱中症対策を行うメリットを紹介します。
従業員の健康と安全を確保できる
熱中症は、従業員の体に深刻なダメージを与えます。熱中症が原因で正しい判断ができなかったり、体がうまく動かなかったりして、思わぬ事故を起こすことも考えられます。
しかし、熱中症対策をしっかりと行えば、従業員が健康に働ける安全な職場を維持できるでしょう。
生産性が向上する
いつ熱中症になってもおかしくない職場環境では、従業員は集中して作業を行うことができません。しかし、企業が環境を整備しておけば、従業員は身体的にも精神的にも安心して作業に従事できるでしょう。その結果、生産性の向上も期待できます。
企業のイメージが向上する
適切な熱中症対策を行うと、従業員は会社が自分を大切にしてくれていると感じ、信頼感や満足度が向上します。従業員の自社へのロイヤリティが増すと、企業の対外的なイメージも良くなることが期待できます。
法的リスクの低下につながる
従業員が熱中症になるリスクを未然に防いでおけば、思わぬ事故の誘発を防ぐことが期待できます。民事訴訟などの法的リスクも軽減できるため、企業の熱中症対策は重要です。
職場で熱中症が発生した際の応急措置
熱中症の予防対策を行っていても、職場で熱中症が発生する可能性はあります。万が一の際には、下記に紹介する流れに沿って、すみやかに応急措置をすることで、従業員の命を救うことにつながります。
1. 意識を確認する
熱中症が疑われる際は従業員の名前を呼び、意識を確認します。呼びかけに反応しない場合や意識が混濁している場合は、すぐに救急車を要請してください。
2. 応急措置をする
熱中症を発症した場所に居続けると、さらにリスクが高まります。救急車を呼んだか否かにかかわらず、従業員を冷房が効いている室内や日陰へ移動させ、応急処置を行いましょう。
3. 体を冷やす
熱中症となった従業員の衣服はゆるめて、熱を発散させましょう。大きな血管が通っている首や脇、太ももの付け根を氷やアイスパックで冷やします。扇風機などで風を送るのも有効です。
4. 水分と塩分を補給する
熱中症となった従業員に意識がある場合は、塩分を含むスポーツドリンクや経口補水液を飲ませます。意識がはっきりしない場合は無理して飲ませず、体を冷やすことに集中しましょう。
【参照】東京労働局登録教習機関 一般社団法人中小建設業特別教育協会「熱中症を発症した時の対処(応急措置)」東京労働局登録教習機関 一般社団法人中小建設業特別教育協会
https://www.tokubetu.or.jp/heatstroke/heatstroke02.html
【参照】厚生労働省「熱中症を防ぐために知っておきたいこと熱中症予防のための情報・資料サイト」|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/happen.html
企業の熱中症対策事例
ここからは、熱中症の発生が多い建設業の中から、対策事例をご紹介します。現場では実際にどのような熱中症対策が有効なのか、確認していきましょう。
建設業A社の事例:オリジナルファン付き作業服を現場に提供
A社は比較的小規模な組織であるため、作業現場の特性や個々人の健康状態に配慮した細やかな対策を実施しました。特徴的な対策としては、現場の一体感を高めることが挙げられます。一体感の強化によって熱中症対策への意識を高めることを目指し、一括購入した会社のネーム入りのファン付き作業服を、下請け作業員に至るまで全員に無償で支給。
コンクリート打設作業現場や風通しの悪い場所など、WBGT値が高い場所では職長に休憩時間変更の権限を与え、10:00~10:30の予定であった休憩を9:00~9:10、10:00~10:10、11:00~11:10の3つに分けて、小まめに取得するといった工夫もしています。
建設・卸売業B社の事例:最新ツールの活用とコミュニケーションで熱中症を予防
B社は労働安全衛生に関係する管理書類を管理できるクラウドシステムを採用し、健康管理上の要注意事項や安全保全対策を管理。身体の熱を測定できるセンサー付きウェアラブルデバイスといった最新ツールの導入も積極的に検討しています。
併せて、「作業の進捗よりも体調管理が大切」と現場に明確に伝え、体調不良の申し出や休憩が取りやすい風土を作りました。元々は10:00と15:00が休憩の予定でしたが、元請との協議により、WBGT値が高い場合は柔軟にこまめな休憩を取ることも可能としています。
塗装工事業C社の事例:階層によるWBGT値の測定とSNSの活用
C社は作業開始前にWBGT値を管理者が測定し、SNSのグループ発信機能で作業者全員の携帯電話に一斉通知しています。その際、翻訳アプリも活用し、外国人労働者にも母国語で伝えています。
また、C社はビルの階層によって作業環境が異なることにも配慮しています。例えば、高層ビルの建築現場では、高層階と低層階の現場の状況が大きく異なる場合があり、熱中症予防に必要な措置も異なることがあるため、職長が巡視しての状況確認や声がけ、WBGT値の測定を確実に実施しています。
【参照】厚生労働省「熱中症対策事例紹介 -企業別取組事例(令和3年度)-」|厚生労働省(2021年)
https://neccyusho.mhlw.go.jp/case/r3/
WBGT値の測定などを活用した熱中症対策で、従業員の健康を守ろう
酷暑の中で作業する従業員を熱中症から守る対策には、客観的な指標であるWBGT値にもとづく作業時間の見直しや、水分・塩分の補給、休憩場所の設置、適切な服装の指導などがあります。暑さが本格化する前の時期は、暑熱順化に配慮することも重要です。
熱中症の予防対策は確実かつ継続的に行い、現場での熱中症ゼロを目指しましょう。
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