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「そろそろ親が心配……」に手を差し伸べる、さりげない見守りサービスとは?


撮影/和知 明(株式会社BrightEN photo)
取材・文・編集/中澤 仁美(ナレッジリング)

就労しながら介護にも携わるビジネスケアラーの数は増加傾向にあり、必要な支援が模索されています。どのように社員をサポートしていけばいいか、すでに課題感を抱えている企業も少なくないのではないでしょうか。高齢者見守りサービス「NiSUMU CARE(ニスムケア)」を展開する株式会社Secualで代表取締役CEOを務める菊池正和さんに、さりげない見守りサービスの意義やビジネスケアラーのニーズ、今の時代だからこそ求められる福利厚生の在り方などについて伺いました。

目次[非表示]

  1. 1.手間なく安価なサービスで2025年問題に挑む
  2. 2.生活に溶け込むプライバシー重視の見守り
  3. 3.福利厚生の在り方を今の時代にフィットさせよう


株式会社Secual 代表取締役CEO 菊池 正和様

菊池 正和(きくち・まさかず)

株式会社Secual 代表取締役CEO
1976年生まれ。芝浦工業大学工学部卒業後、1998年に第二電電株式会社(現KDDI株式会社)へ入社し、音楽配信サービス「LISMO」開発リーダーやコンシューマー向け商品企画、商品戦略マネージャーを担当。2015年、株式会社VLOGを設立。2016年、株式会社Secualに副社長として参画し、事業拡大に向けての体制変更に伴い、2018年に代表取締役CEO就任。

手間なく安価なサービスで2025年問題に挑む

従来、高価なものとして扱われてきたホームセキュリティーを、誰もが当たり前に活用できる世界にしたい――。「安心をもっとカジュアルに」をミッションに掲げる当社は、こんな思いでセキュリティーの「民主化」を推し進めてきました。マズローの欲求5段階説を見ても、人間にとって安全の欲求は、生理的欲求に次いでピラミッドの基盤を成すもの。日常的な不安を手軽に解消できるソリューションにより、安心・安全という土台を盤石にした上で、自分らしい生活を楽しんでいただきたいという考えです。

こうして私たちが展開してきたのが、「Secual Home(セキュアルホーム)」というセルフ型のスマートホームセキュリティーサービス。人の動きを検知・通知する防犯機能が備わっているのですが、これを応用することで誕生したのが高齢者見守りサービス「NiSUMU CARE(ニスムケア)」です。国民の5人に1人が75歳以上の超高齢社会となる2025年は、目前に迫りつつあります。離れて暮らす家族が年齢を重ね、その安否確認が課題となる方はますます増えていくでしょう。だからこそ、私たちの持つノウハウを活用して手間なく安価な見守りサービスを提供することに、大きな意義があると確信しています。

※2024年7月現在、初期費用 13,200円(税込)、月額費用 2,970円(税込)

「NiSUMU CARE」では、室内に設置した専用の見守りセンサーが常時モニタリングし、人の動き(活動データ)と温度・湿度・照度(環境データ)を収集し続けます。異常が確認されると、当社の見守りセンターがご本人に電話をかけて安否確認を行い、連絡が付かない場合にはご家族などの緊急連絡先に連絡する仕組みです。例えば、通常と比べて人の動きが少な過ぎる(何らかの原因で動けなくなっている?)、室温が急激に高くなっている(熱中症のリスクあり?)といった事態にも早々に気付き、何らかの対策を打てるわけです。また、登録されたご家族などの連絡先に1日1回はメールで「レポート」をお送りし、その日の活動状況や異常の有無などを分かりやすく報告しています。


壁に設置されているNiSUMU CARE(ニスムケア)の見守りセンサー

機器の設置や設定はすべて専門スタッフが訪問して行うため、申し込み後に利用者側で作業が発生することはありません。また、インターネット環境も同時に提供できるため、もともと家にインターネット回線が通っていなくても大丈夫です。実際に見守りを開始してからは異常が確認できたときだけに連絡が来るので、アプリなどを定期的に確認する必要はなし。見守る側にとっても、見守られる側にとっても、手間のかからないシンプルなサービスをめざしました。

生活に溶け込むプライバシー重視の見守り

私自身の親も70歳代なのですが、思うように活動できない場面が増えるなど、心配に思うことも少しずつ出てきています。こうした「そろそろ介護を考え始める世代」の親を支えるのは、40~50歳代という働き盛りの方が大多数でしょう。自分の日常を考えてもそうですが、仕事をしながら親の状態を確認し続けることはかなり大変です。特に離れて暮らしている場合、頻繁に実家の様子を見に行ったり、毎日のように電話をかけたりすることは、現実的には難しいと考えるビジネスパーソンが大半ではないでしょうか。かと言って、まだ介護認定を受けていなければ(あるいは介護度が低ければ)、いわゆる介護施設に入居することはできません。介護が始まる前や介護初期から使える、カジュアルな見守りサービスのニーズは大きいはずです。

もちろん、さまざまな見守りサービスがすでに数多く存在しますが、それぞれ一長一短があります。家族の状態やニーズ、コスト面などを総合的に検討し、選択する必要があるでしょう。例えば、有事の際に駆け付けてくれるタイプのサービスは安心感が大きいですが、いざという時にボタンを押すといったアクションが取れるか心配な面もあります。電化製品の利用状況を記録・通知するタイプは手軽ですが、現場の可視化という意味では情報量が少ないでしょう。定期的に電話や訪問をするタイプは、コミュニケーションが取れる利点がある一方、コストの観点から頻度が低くなりがちです。こうした従来のサービスと比較すると、センサーにより多くの項目がモニタリングできること、能動的なアクションが必要ないことなどが「NiSUMU CARE」の特徴だといえます。

もう一点、高齢者の見守りを考える上で欠かせないのが、プライバシーの観点です。そもそも多くの高齢者は、積極的に「見守られたい」とは感じていません。自分の生活を覗かれるようなことは避けたい、そう思うのは当然のことでしょう。だからこそ、カメラを使用して室内の様子をモニタリングするような手法は、当社では推奨していません。相手の尊厳を重視しながら適切な範囲を見守るバランス感覚が重要で、赤ちゃんやペットの見守りと同質に考えることはできないはずです。その点で「NiSUMU CARE」は、あくまでも移動の有無や環境データをセンサーで感知するものなので、比較的受け入れられやすいのではないでしょうか。火災報知機のような住宅設備の一種として、違和感なく生活に溶け込めるサービスだと思います。


生活に溶け込むデザインで、プライバシーも重視している

ビジネスケアラーを支え、企業としても成長を

就労しながら家族介護を担うビジネスケアラーは、今後日本でますます増加していくといわれています。経済産業省によれば、2030年にビジネスケアラーは318万人に達し、仕事と介護の両立困難(労働生産性低下など)によって起こる経済損失の推計は約9.1兆円にもなるのだとか。仕事と介護の両立は個人の問題を超えて、今や大きな社会課題であり、一企業としても見過ごすことができなくなりつつあります。こうした背景から、「NiSUMU CARE」は個人のお客さまからの申し込みに限らず、企業の福利厚生としても幅広く展開しています。

「介護」という言葉からは食事介助やおむつ交換といった身体的支援がイメージされがちですが、どのような支援制度やサービスがあるか調べて導入することや、各種手続きや必要な機器の設置などをすることもその一環だと考えられます。つまり、本格的なケアが必要になる以前から、高齢者を支える家族は負担を抱えているということ。特にビジネスパーソンは、そうした対応のために仕事を休んだり、業務と同時並行で物事を進めたりと苦労しているケースが少なくありません。仕事に集中できる環境をつくるためには、企業側からも何らかの支援が必要ではないでしょうか。手軽に利用できる見守りサービスが福利厚生のメニューの中にあり、すぐ生活に取り入れられれば、社員は大きなメリットを感じるはずです。

社員がのびのびと働き、成長できる条件を整えることは、企業の成長に欠かせない条件です。人材不足の時代、採用した社員に長く活躍し続けてもらうためにも、仕事と介護の両立は欠かせないテーマになるでしょう。そうしたサポートが手厚く、安心して働ける企業というイメージを確立できれば、採用の後押しになることも十分に考えられます。2024年からは健康経営優良法人認定の項目として「介護と就業の両立支援」が追加され、見守りサービスなどの介護費用に対する金銭補助が評価されるようになっています。社員のためにも企業のためにも、プラスになる取り組みであることは間違いないでしょう。

福利厚生の在り方を今の時代にフィットさせよう

今後の展望としては、AIの技術を取り入れながら、より多くの方に「NiSUMU CARE」を提供できるよう改善を重ねていきたいと考えています。現状では、見守りセンターのスタッフが人力で行っている部分が大きいのですが、これからは活動量などの異常をAIで自動的に検出するシステムを構築し、見守りのレベルを一層向上させていく見通しです。また、いざというときに現場を確認するためのオプションとして、警備員の出動はもちろんのこと、ドローンなどを活用することもイメージしています。

さらに当社では、まちづくり事業にも注力。「街中にある看板や信号機などが見守り機能を備えていたらいいのに」という発想から、防犯・防災・見守り機能を搭載した次世代街灯である「Secual Smart Pole(セキュアルスマートポール)」を開発・展開してきました。今後は、こうした機器とホームセキュリティーを連動させるかたちで、屋内と屋外をシームレスに見守ることのできる環境を構築できればと考えています。たとえ家族の認知症が進行し、徘徊が課題になったとしても安心して暮らせるような社会づくりの一端を、私たちが担えれば幸いです。


まちづくり事業にも注力し、「Secual Smart Pole」を開発・展開。

企業は社員だけでなく、その家族をも背負う使命を持つ――。企業のトップたる私の信念ですが、賛同してくださる経営者も多いでしょう。映画や遊園地といった娯楽の補助もいいですが、社員と家族が安心して暮らすための、生活の本質を支えるような福利厚生を積極的に導入することが大切ではないでしょうか。固定観念にとらわれ過ぎず、今の時代にフィットした本当に求められる福利厚生を検討して、社員のニーズに応えていきましょう。いざ親の介護や見守りが必要になったときはもちろん、その前段階で「ちょっとしたサポート」が欲しくなったときにも、駆け込み寺のような存在として「NiSUMU CARE」を頼っていただけるよう、私たちもサービスのブラッシュアップに邁進してまいります。



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