レジリエンスとは?言葉の意味と企業に必要な取り組みを解説

レジリエンスとは?言葉の意味と企業に必要な取り組みを解説

ビジネス環境が変化し、事業の将来を見通すことが困難な中、「レジリエンス」という言葉が注目されています。
物理学では「回復力」「弾力」「復元力」などを意味するレジリエンスは、ビジネスではどのように受け止められ、取り組まれているのでしょうか。

本記事では、レジリエンスの意味や注目される理由、レジリエンスを高めることのメリットや高め方などについて解説します。

目次[非表示]

  1. 1.レジリエンスとは困難を乗り越え回復する力
  2. 2.レジリエンスに類似した言葉
    1. 2.1.メンタルヘルス
    2. 2.2.ストレス耐性
    3. 2.3.ストレスコーピング
    4. 2.4.ハーディネス
  3. 3.レジリエンスに影響を与える因子
    1. 3.1.危険因子と保護因子
    2. 3.2.精神的回復力の3因子
  4. 4.レジリエンスが高い人の特徴
    1. 4.1.柔軟性がある
    2. 4.2.一喜一憂しない
    3. 4.3.積極的にコミュニケーションをとる
    4. 4.4.挑戦を続けられる
    5. 4.5.楽観的
  5. 5.レジリエンスが低い人の特徴
    1. 5.1.切り替えが得意でない
    2. 5.2.一喜一憂する
    3. 5.3.あきらめが早い傾向がある
  6. 6.レジリエンスを高めるコンピテンシー
    1. 6.1.自己認識
    2. 6.2.セルフコントロール
    3. 6.3.精神的柔軟性
    4. 6.4.現実的楽観性
    5. 6.5.自己効力感
    6. 6.6.人とのつながり
  7. 7.従業員のレジリエンスを高めるメリット
    1. 7.1.従業員の健康を増進できる
    2. 7.2.環境変化への対応力が上がる
    3. 7.3.目標達成力が培われる
    4. 7.4.企業価値が高まる
  8. 8.企業がレジリエンス向上のためにできること
    1. 8.1.職場の心理的安全性を高める
    2. 8.2.挑戦を評価し、失敗を責めない
    3. 8.3.情報共有と意見交換を活発にする
  9. 9.健康経営を実践し、社員のレジリエンスを高めよう

レジリエンスとは困難を乗り越え回復する力

レジリエンス(resilience)とは「回復力」「弾力」「復元力」などを意味する言葉です。心理学では「精神的回復力」などと表現され、ビジネスの世界では「困難を乗り越え回復する力」といった意味で使われ注目されています。

ビジネスにおいてレジリエンスが注目されている理由は、近年の社会情勢や事業環境の変化にあります。環境問題や新型コロナウイルス感染症の拡大、国際情勢の動きがある中、ビジネスの未来を予測するのは難しい傾向があります。

こうした状況下では、企業の事業運営や従業員の日々の業務にも、いつ・どのような危機や困難があるかの予想は容易ではないといえるでしょう。その中でも目標を達成し、事業を前進させるための力として、レジリエンスが注目されています。

レジリエンスに類似した言葉

レジリエンスには意味が類似した言葉が複数あります。レジリエンスへの理解を深めるために覚えておきましょう。

メンタルヘルス

メンタルヘルスは「心の健康」「精神的健康」という意味で、心身のストレスや悩みの軽減・緩和、サポートなどを指します。多くの企業が職場のメンタルヘルスを重視しており、従業員のストレスチェックを行うなどの対策をとっています。

ストレスや困難からの回復などを指すレジリエンスとは意味が異なりますが、レジリエンスを高めるとメンタルヘルスも向上すると考えられており、レジリエンスと深い関係があるといえます。

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【参考】e-ヘルスネット「職場のメンタルヘルス」|厚生労働省 e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-003.html

ストレス耐性

ストレス耐性は言葉のとおり、ストレスに耐える力のことです。ストレス耐性が高い人は、大きなストレスがかかっても乗り越えやすく、低い人は小さなストレスにも耐えるのが難しい傾向があります。
ストレス耐性は、ストレスなどの困難を乗り越え、その後回復する力を意味するレジリエンスの一部と考えられます。

ストレスコーピング

ストレスコーピング(stress coping)とは、ストレスを受けた際に対処する方法のことです。コーピングには「対処」や「対応」といった意味があり、ストレスの原因そのものに働きかけることによって対策や解決につなげる「問題焦点型コーピング」と、ストレスに起因する感情をコントロールして対処する「情動焦点型コーピング」、ストレスの原因から物理的な距離を取ったり、ほかのことをして気分を発散したりして緩和を図る「ストレス解消型コーピング」の大きく3つの方法があります。

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【参考】厚生労働省 こころの耳 用語解説 ストレス・コーピング│厚生労働省 こころの耳
https://kokoro.mhlw.go.jp/glossaries/word-1614/

【参照】CANVAS「5分で理解!ストレスコーピングとは?分かりやすく解説します」|株式会社マイナビ(2018年3月)
https://mynavi-agent.jp/dainishinsotsu/canvas/2018/03/5-9.html

ハーディネス

​​​​​​ハーディネス(hardiness)は、直訳すると「耐久力」という意味です。大きなストレスがある環境でも、それを跳ね返し、健康を維持する特性を指します。ストレスからの回復力などを意味するレジリエンスとはニュアンスが異なるといえるでしょう。

レジリエンスに影響を与える因子

レジリエンスには、影響を与えると考えられている因子があります。因子とは、特定の現象を生み出す要素や、それを構成する部分のことを指します。レジリエンスの主な因子をご紹介しますので、理解するための参考にしてください。

危険因子と保護因子

レジリエンスの「危険因子」と「保護因子」は、レジリエンスを理解するための重要な要素であるといわれています。それぞれの意味は下記のとおりです。

  • 危険因子
    危険因子とは、ストレスの元となるできごとのことをいいます。人間関係のトラブルや病気・ケガ、災害、戦争などが危険因子の代表例です。レジリエンスが高まると、危険因子に対して適切に対処ができるようになると考えられています。

  • 保護因子
    保護因子とはストレスを乗り越え、レジリエンスを促す要因のことをいいます。内的な因子である性格や価値観、また環境的な因子としては家族や友人との信頼関係などが挙げられます。保護因子の質と量が高まれば、それに伴いレジリエンスも高まるとされています。

精神的回復力の3因子

レジリエンスは心理学において「精神的回復力」といわれますが、心理学者の小塩真司氏らの研究グループは、精神的回復力を測定できる3つの因子を2002年に提唱しました。3因子についてそれぞれ解説します。

  • 新奇性追求
    新奇性追求とは、さまざまな新しい物事への興味・関心のことをいいます。新奇性追求の因子があると、経験にとらわれることなくチャレンジできると考えられています。レジリエンスを構成する重要な因子ともいえます。

  • 感情調整
    感情調整とは、ストレスや困難に対し、落ち込んだり回避しようとしたりするネガティブな感情を制御し、コントロールすることをいいます。感情調整をうまく行えば、ストレスや困難を柔軟に乗り越えることができます。レジリエンスを高める上で欠かせない因子ともいえます。

  • 肯定的な未来志向
    肯定的な未来志向とは、自分の良い未来を期待し、プランを立てて取り組もうとすることです。良い未来を期待するだけでは、肯定的な未来志向があるとはいえません。具体的なプランを立て、実現に向けて進むことで精神的な回復を促進するといわれています。

【参考】NECソリューションイノベータ株式会社 レジリエンスとは?ビジネスでの意味や高める方法を解説│NECソリューションイノベータ株式会社(2022年9月2日 )
https://www.nec-solutioninnovators.co.jp/sp/contents/column/20220902_resilience.html

レジリエンスが高い人の特徴

レジリエンスが高い人には、複数の特徴があります。主な特徴は下記のとおりです。

柔軟性がある

レジリエンスが高い人は、ひとつの考え方に固執することなく、事態に柔軟に対応できると考えられています。たとえストレスや困難があっても、発想を転換するなどしてうまく乗り越える方法を探すことが期待できます。

一喜一憂しない

感情的になりやすい人は、困難やストレスがあると怒りや悲しみにとらわれてしまうと考えられています。レジリエンスが高い人は、物事の本質に向き合い適切に対処することを心掛け、一喜一憂しない傾向があります。感情にとらわれないからこそ課題に多角的にアプローチでき、乗り越えていくことが期待できます。

積極的にコミュニケーションをとる

レジリエンスが高い人は、周囲の人と積極的にコミュニケーションをとれるといわれています。周囲の人に感謝し、協力的な関係を築けているのです。だからこそ、困難があれば助けを求めることができ、周囲の人も助力を惜しみません。結果として、困難を柔軟に乗り越えていくことが期待できます。

挑戦を続けられる

挑戦を続けられることも、レジリエンスが高い人に見られる特徴です。レジリエンスが高い人は、困難や課題に遭遇し失敗したとしても、その事実を真摯に受け止めて立ち直る傾向があります。そして、挑戦し続けるだけでなく、失敗から学んで次のチャレンジに活かせる強さもあると考えられています。

楽観的

レジリエンスが高い人は楽観的です。ストレスや困難があるとしても、「なんとかなるだろう」「きっと大丈夫」といった明るい見通しを持っています。そのため、何事にも不安にならず前向きに取り組むことができ、自然と乗り越えていける傾向があります。

レジリエンスが低い人の特徴

レジリエンスが低い人にも、いくつかの特徴が見られます。主な特徴は下記のとおりです。

切り替えが得意でない

レジリエンスが低い人は、失敗を引きずり、気持ちを切り替えていくことが苦手なケースが見られます。失敗や悩みにとらわれてしまうため不安がぬぐえず、次の仕事に新たな気持ちで取り組むことが難しいと考えられています。

一喜一憂する

レジリエンスが低い人は、高い人とは逆に一喜一憂する傾向があります。感情に振り回されやすく、そのこと自体がストレスとなり、物事に対し前向きになりにくいといわれています。

あきらめが早い傾向がある

あきらめてしまいがちであることも、レジリエンスが低い人の特徴です。少しの失敗で落ち込み、小さなストレスでも避けようとする傾向があるため、うまくいかないことがあると、すぐにあきらめてしまいます。その結果、成功体験を積むことが難しくなり、ますますあきらめやすくなるのかもしれません。

レジリエンスを高めるコンピテンシー

レジリエンスを高めるには、コンピテンシー(要素)を理解・意識することが大切だと考えられています。下記、6つのコンピテンシーを、日頃から心掛けてみましょう。

自己認識

自己認識とは言葉のとおり、自己に対する認識のことです。自分の感情や思考、行動を意識し、強み・弱み、パターンなどを客観的に捉えて自分自身を認識することを指します。これにより、困難やストレスに直面したときに自分の状態を認識でき、乗り越え回復していくための手を打つことができるようになります。

セルフコントロール

自分の感情や思考を制御し、目指す結果が得られるよう適切に行動することをセルフコントロールといいます。怒りや悲しみといったネガティブな感情だけでなく、欲求をうまく抑えることもセルフコントロールに含まれます。

精神的柔軟性

精神的柔軟性は、ストレスや困難を前向きに捉える力です。精神的柔軟性があると、先入観や経験にとらわれ、視野が狭くなってしまうのを防ぐことができます。これにより、ストレスや困難をしなやかに乗り越えていくことができると考えられています。

現実的楽観性

明るい未来を思い描き、それを実現できると信じて前向きになれる力が現実的楽観性です。これがあると、困難な状況でも決して悲観的にならず、現実的な選択をしながら前向きに取り組むことができます。

自己効力感

自己効力感とは、自分には目標を達成できる能力があると信じる感覚のことです。自己効力感があると、自分の強さや弱さを認識した上で、目標に向け自信を持って取り組み、困難を乗り越えていくことが期待できます。

人とのつながり

人とのつながりは、周囲の人との信頼関係です。困難は、一人で解決しようとするより信頼できる仲間といっしょに取り組むほうが解決しやすいといえるでしょう。人とのつながりを作ることは、レジリエンスの向上につながります。

【参考】HUMAN CAPITAL サポネット 環境変化に強い人材を育成する「レジリエンス」の重要性 │株式会社マイナビ(2019年3月14日 )
https://saponet.mynavi.jp/column/detail/ty_saiyo_t03_t06_resilience_210427.html

従業員のレジリエンスを高めるメリット

企業が従業員のレジリエンス向上に取り組むと、複数のメリットがあります。従業員のレジリエンスを高める主なメリットは、下記のとおりです。

従業員の健康を増進できる

従業員のレジリエンスが高まると、ストレスなどにより調子を崩すことが減ります。業務量の増加や困難な課題などがあると、従業員には少なからず負担となりやすくなります。しかし、従業員のレジリエンス向上に取り組めば、心身の健康を維持できる従業員が増え、休職・離職の低減やモチベーションの維持につながるでしょう。

環境変化への対応力が上がる

企業が市場のニーズや社会の変化に対応して成長していくためには、変化に強い企業体質を作ることが大切です。従業員のレジリエンスを高めることにより、環境変化への対応力が高まり、強い企業体質を作ることも期待できます。

目標達成力が培われる

従業員のレジリエンスを高めると、目標達成力の高い従業員が増えます。レジリエンスは困難やストレスをしなやかに乗り越えて回復する力です。レジリエンス向上に取り組むことで、困難に負けず目標を達成できる従業員が増え、企業そのものが前進する力になるでしょう。

企業価値が高まる

事業の将来性やリスクマネジメント力は、企業の重要な評価指標のひとつです。事業が成長していける可能性やリスクに対処する力には、従業員のレジリエンスが影響します。レジリエンス向上に取り組むことは、投資家からの評価や企業価値の向上にも寄与するといえます。

【参考】HUMAN CAPITAL サポネット 環境変化に強い人材を育成する「レジリエンス」の重要性 │株式会社マイナビ(2019年3月14日 )
https://saponet.mynavi.jp/column/detail/ty_saiyo_t03_t06_resilience_210427.html

企業がレジリエンス向上のためにできること

企業にとって、従業員のレジリエンス向上への取り組みは大切です。従業員のレジリエンスが高まると、前述のとおり組織の目標達成力も向上し、企業として成果を出しやすくなるからです。企業が従業員のレジリエンス向上のためにできることをご紹介します。

職場の心理的安全性を高める

企業が従業員のレジリエンスを高めるためにできる取り組みのひとつは、職場の心理的安全性を高めることです。心理的安全性の高い職場だと、従業員は上司や先輩に相談しやすくなります。有効な解決策を教えてもらうことができれば、困難を柔軟に乗り越えられるかもしれません。

挑戦を評価し、失敗を責めない

挑戦を評価し、失敗を責めない企業風土を作れば、従業員のレジリエンスは向上するでしょう。失敗が許されない雰囲気があると、従業員は挑戦しようとしなくなり、困難も乗り越えられなくなってしまうかもしれません。挑戦をたたえて失敗を責めず、失敗を次のチャレンジに活かすよう、取り組むことが大切です。

情報共有と意見交換を活発にする

従業員のレジリエンスを高めるには、職場の情報共有と意見交換を活発にすることが大切です。日常的に情報が共有され、議論が行われている職場だと、困難を突破するアイディアも生まれやすくなります。また、そうした雰囲気を作ることで、従業員の挑戦意欲や柔軟性の向上も期待できます。

健康経営を実践し、社員のレジリエンスを高めよう

ビジネスにおけるレジリエンスは「困難を乗り越え回復する力」を意味し、従業員が困難を越えて目標を達成していくために大切な力であると考えられています。

レジリエンスが高い人は、明るい未来を信じ、常に前向きに取り組める力を持っているとされています。そのような従業員が増えると、企業は目標を達成しやすくなり、社会からの評価も高まる可能性があります。従業員のレジリエンスを高めるためには、心理的安全性や挑戦する姿勢を大切にし、情報や意見が活発に交換される職場を作ることが大切ともいえます。従業員のレジリエンス向上に取り組み、会社の前進につなげる試みをしてみてはいかがでしょうか。

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