セルフマネジメントとは?ビジネスにもたらす効果や手法を解説
働き方の多様化や人手不足による生産性向上の必要性などから、みずからを律して高いパフォーマンスを発揮する「セルフマネジメント」の重要性が高まっています。従業員一人ひとりがセルフマネジメントを身に付けることができれば組織力は高まり、変化の激しい時代においても高い成長率の維持につながることが期待できるでしょう。
本記事では、セルフマネジメントの概要やビジネスにもたらす効果、セルフマネジメントを高める手法などについて解説します。
目次[非表示]
- 1.セルフマネジメントとは、目標達成や自己実現のために自身を管理すること
- 2.セルフマネジメントが注目されている背景
- 2.1.働き方改革の推進
- 2.2.テレワークの普及
- 2.3.自己成長の加速
- 2.4.超高齢社会による人材不足
- 3.セルフマネジメントの構成要素
- 3.1.メンタルヘルスケア
- 3.2.レジリエンス
- 3.3.マインドフルネス
- 3.4.アンガーマネジメント
- 3.5.キャリアデザイン
- 4.セルフマネジメントがビジネスにもたらす効果
- 4.1.業務効率化によって生産性が高まる
- 4.2.組織の人間関係が良好になる
- 4.3.モチベーションを高く維持できる
- 5.セルフマネジメント力を高める具体的手法
- 5.1.自身の行動の癖や特性を分析する
- 5.2.自分の思考や感情と定期的に向き合う
- 5.3.具体的な目標を設定する
- 5.4.楽しい時間もコントロールする
- 5.5.日々のタスクを明確化する
- 5.6.日常的に心身のケアをする
- 6.セルフマネジメントによって可能となる多様な働き方
- 7.従業員のセルフマネジメント力を高め、健康的に働ける環境を構築しよう
セルフマネジメントとは、目標達成や自己実現のために自身を管理すること
セルフマネジメント(self-management)とは、自分自身を管理する力のことを指します。
目標達成や自己実現のためには、「やりたいこと」と「やるべきこと」の折り合いをつけ、やるべきことに時間を割かなくてはなりません。ゴールに到達するまでモチベーションや集中力を維持し、ともすれば楽なほうに逃げがちな感情をコントロールして高いパフォーマンスを発揮し続けることも重要です。
このように、少なからずストレスがかかる状況でもみずからを甘やかさず、目標達成や自己実現のために必要とされるのがセルフマネジメントです。
【参照】マイナビニュース「セルフマネジメントをレベルアップさせる方法」|株式会社マイナビ(2020年9月)
https://news.mynavi.jp/article/20200930-1258214/
セルフマネジメントが注目されている背景
昨今、セルフマネジメントが注目されている背景には、組織と個人を取り巻く環境の著しい変化が挙げられます。ここでは、多くの人がセルフマネジメントに取り組むようになった4つの背景について、具体的に見ていきましょう。
働き方改革の推進
働き方改革により、あらゆる業種の長時間労働を抑制する取り組みが進んでいます。ワークライフバランスを改善して従業員の健康が増進されるメリットは非常に大きいものですが、需要に対して働き手が不足する状況の加速は明らかであり、これまで以上に一人ひとりが効率的に働かなくてはならなくなるでしょう。
仕事の効率性を高める上でも、仕事にかかる時間を効率化するセルフマネジメントが求められてきます。
【参照】厚生労働省「「働き方改革」の実現に向けて」|厚生労働省(2024年2月)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html
テレワークの普及
コロナ禍で急速に普及が進んだテレワークも、セルフマネジメントの必要性と深く関係しています。
テレワークは、ICTを活用し、本来の勤務地であるオフィスから離れて仕事をする働き方です。自宅やコワーキングスペース、カフェなど、さまざまな場所で仕事をする人を見かけるようになりました。
テレワークは自由度が高く時間を有効に使える働き方である一方、会社の目が行き届かない点には注意が必要です。油断して怠けてしまったり、プライベートとの区別がつかなくなって延々と働き続けてしまったりするケースが少なくないからです。
テレワークでは、業務に集中できる環境づくりやタスクの管理に主体的に取り組むセルフマネジメントが必須といえるでしょう。
【参照】厚生労働省「テレワークを巡る現状について」|厚生労働省(2022年8月)
https://www.mhlw.go.jp/content/11911500/000662173.pdf
自己成長の加速
ドラスティックに移り変わるビジネス環境の中で生き残るために、企業は社会の変化を察知して迅速に対応できる組織づくりを進める必要があります。企業の中で働く従業員にも同様に、変化に対応できるスキルを身に付けるべく自己成長の加速が求められていくでしょう。
学びに対するモチベーションをセルフマネジメントによって維持すれば、必要な知識とスキルの習得にも役立ちます。
【参照】CANVAS「仕事量が多い時は好機!? セルフマネジメントで切り開くマネージャーへの道」|株式会社マイナビ(2023年6月)
https://mynavi-agent.jp/dainishinsotsu/canvas/2023/06/post-999.html#title5
超高齢社会による人材不足
日本は超高齢社会に突入し、企業の中核をなす人材の不足が深刻化しています。
限られたリソースで高い成果を上げるには、業務の効率化が必要不可欠です。優先順位の高いタスクから確実にこなし、時間を上手にコントロールするセルフマネジメントは、人材不足の社会でこそ活きてくるともいえます。
【参照】内閣府「令和5年版高齢社会白書」|内閣府(2023年6月)
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2023/gaiyou/05pdf_indexg.html
セルフマネジメントの構成要素
セルフマネジメントは、大まかに5つの要素に分けることができます。下記に紹介する5つの構成要素を押さえてこそ、セルフマネジメントは成り立つと捉えておきましょう。
メンタルヘルスケア
メンタルヘルスケアは、ストレスを上手にコントロールして心の健康を保つ取り組みです。仕事のパフォーマンスは、心身ともに充実して初めて高まります。しかし、体の健康に比べて心の健康は自分にも他人にもわかりにくく、どうしても軽視されがちです。その背景からも、メンタルヘルスケアは意識的にマネジメントする必要があります。
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レジリエンス
レジリエンスは、ストレスや逆境に直面したときの適応力、回復力のことです。業務の中で生じたストレスを柔軟に受け止め、素早く立ち直るセルフマネジメント能力とも言い換えられます。
【おすすめ参考記事】
マインドフルネス
マインドフルネスは、「今」に集中して瞑想し、過去を思い出し未来を想像することによってストレスを軽減する方法です。
変化の激しい時代において、より良い仕事をすることを目指して日常にマインドフルネスを実践する人も増えているようです。
【参照】eJIM(evidence-based Japanese Integrative Medicine)「瞑想 Meditation」|厚生労働省(2023年2月)
https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c02/07.html
アンガーマネジメント
アンガーマネジメントは自身の怒りと向き合い、上手に付き合うための心理トレーニングです。アンガーマネジメントを身に付ければ心が怒りに支配されることなく、正しい判断をすることができます。
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キャリアデザイン
キャリアデザインは、自分が将来なりたい姿を思い描くことです。また、その実現に向けて自己成長を継続していく力です。自分自身で人生を主体的にデザイン・設計し、実現していくことを目指すため、セルフマネジメントに欠かせない構成要素といえます。
【参照】マイナビ研修サービス「キャリアデザイン研修」|株式会社マイナビ
https://hrd.mynavi.jp/service/service-26388/
セルフマネジメントがビジネスにもたらす効果
セルフマネジメントがビジネスにもたらす効果とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。セルフマネジメントに取り組むと、ビジネスには下記のような好ましい影響が期待できます。
業務効率化によって生産性が高まる
セルフマネジメントをすると、限られた時間を上手に使って優先順位の高いタスクから効率的にこなせるようになります。業務が効率化すれば、組織全体の生産性も高まるでしょう。
【参照】秋田労働局 雇用環境・均等室「ちょっとだけヒント~生産性向上取組事例等の紹介~」|厚生労働省
https://jsite.mhlw.go.jp/akita-roudoukyoku/content/contents/000559665.pdf
組織の人間関係が良好になる
セルフマネジメントを実践すれば、怒りや落ち込みといったネガティブな感情をうまくコントロールできるようになるでしょう。すると、周囲とのコミュニケーションが円滑になり、より良い人間関係の構築が期待できます。
【参照】こころの耳「労働者個人向けストレス対策(セルフケア)のマニュアル」|厚生労働省(2011年)
https://kokoro.mhlw.go.jp/etc/pdf/tool-self02.pdf
モチベーションを高く維持できる
セルフマネジメントでメンタルヘルスを保つと、ストレスや不安が増していく状況でもモチベーションを高く保って働けるようになります。モチベーションが高いと成果にもつながりやすく、仕事にやりがいを感じることも増えるでしょう。
【参照】厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-」|厚生労働省(2019年9月)
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/19/dl/19-1-2-3.pdf
セルフマネジメント力を高める具体的手法
セルフマネジメントは、「身に付けたい」と思ってすぐに習得できる能力ではありません。普段の生活の中で下記の点を意識していくと、少しずつセルフマネジメント能力が高まっていくでしょう。
自身の行動の癖や特性を分析する
まずは、自分の特性を客観的に分析してみます。どんなときに落ち込み、どんなことを言われると喜ぶのか、また何にやりがいを感じるのかといった感情の変化に向き合ってみましょう。
すると、「管理系の仕事が苦手」「コミュニケーションをとるのは得意」「凡ミスが多い」といった日常業務における特徴が見えてくるはずです。
セルフマネジメントが行き届かなくなるタイミングや、パフォーマンスが低下するきっかけを把握して対処法をつかむことができれば、セルフマネジメント能力を効率良く高めることが期待できます。
【参照】厚生労働省「セルフ・キャリアドッグ導入支援事業「セルフ・キャリアドッグ」導入の方針と展開」|厚生労働省(2017年12月)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/0000192530.pdf
自分の思考や感情と定期的に向き合う
仕事が好きな人、仕事熱心な人、優秀で責任のある仕事を任されやすい人は、自分の感情に気づかないふりをして働き続けてしまう傾向もあります。
そのため、「疲れていないか?」「今の働き方に満足しているか?」といったことを時々自分に問いかけることは、メンタルヘルスケアによるセルフマネジメントへとつながります。自分の思考や感情と定期的に向き合うことを続けていくことも、セルフマネジメント力向上の重要な手法といえるでしょう。
【参照】独立行政法人労働者健康安全機構「職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~」|厚生労働省(2017年3月)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000153859.pdf
具体的な目標を設定する
目標設定は、モチベーションの維持向上に欠かせません。ゴールまでのあいだに具体的かつ短期的な目標をいくつか立てて、ひとつずつクリアしていきましょう。
【参照】マイナビニュース「セルフマネジメントをレベルアップさせる方法」|株式会社マイナビ(2020年9月)
https://news.mynavi.jp/article/20200930-1258214/
楽しい時間もコントロールする
セルフマネジメントに本格的に取り組むなら、仕事の時間だけでなく、趣味や遊びの時間もコントロールする必要があります。
お酒を飲みに行って日付を超えてそのまま寝てしまい、翌日の仕事に遅刻したり、就業時間中の集中力が落ちたりすれば、セルフマネジメントができていない状態です。
仕事と余暇を上手に切り分け、生産性の向上に努めることもセルフマネジメント能力の向上につながると捉えておきましょう。
【参照】【参照】厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-」|厚生労働省(2019年9月)
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/19/dl/19-1-2-3_04.pdf
日々のタスクを明確化する
全体として実現したい未来が決まったら、「実現したい未来」「なりたい自分」から、日々のタスクを明確にしていきましょう。
いきなり大きな目標を掲げると疲弊してしまうため、少しずつクリアしていけるタスクを設定することが大切です。
【参照】マイナビニュース「セルフマネジメントをレベルアップさせる方法」|株式会社マイナビ(2020年9月)
https://news.mynavi.jp/article/20200930-1258214/
日常的に心身のケアをする
体の疲れと心の疲れに正面から向き合うこともセルフマネジメントにつながります。「疲れているな」と感じたら、自分の好きなことに時間を使い、気分転換をすることも大切です。誰しも常に好調を維持するのは難しいため、日常的に適切なケアをして不調とも上手に付き合っていきましょう。
【参照】厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-」|厚生労働省(2019年9月)
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/19/dl/19-1-2-3.pdf
セルフマネジメントによって可能となる多様な働き方
セルフマネジメントをすることで可能となる働き方もあります。具体的にどのような働き方があるのか、詳しく見ていきましょう。
リモートワーク
セルフマネジメントができる従業員は、オフィスという制限から離れてもこれまでと同じように成果を発揮します。そのため、リモートワークでも不安なく仕事を任せることができます。
【参照】厚生労働省「テレワーク活用の好事例集」|厚生労働省(2016年)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000152036.pdf
ティール組織
ヒエラルキーがなく、組織を構成する従業員が意見を出し合ってルールや仕組みを作り、意思決定を行う組織モデルをティール組織といいます。
一人ひとりのメンバーが組織の目標を達成するために自律的に働けば、上司や先輩によるマイクロマネジメントも必要なくなり、自然と組織が進化し続けるでしょう。
【参照】HR Trend Lab「ティール組織とは?それぞれの組織モデルをわかりやすく解説」|株式会社マイナビ(2022年7月)
https://hr-trend-lab.mynavi.jp/column/organizational-development/1509/
パラレルキャリア
本業とは別に、複数の仕事や活動をすることをパラレルキャリアといいます。
パラレルキャリアが実現すると、本業以外の分野でもスキルアップができ、個人の将来設計の幅が広がります。また、パラレルキャリアで得た知見や経験を、組織に還元することもできるでしょう。
【参照】tameni「転職にも繋がるパラレルキャリアとは?副業との違いやメリット、始め方を知ろう」|株式会社マイナビ(2023年8月)
https://tameni.mynavi.jp/career/5230/
従業員のセルフマネジメント力を高め、健康的に働ける環境を構築しよう
従業員一人ひとりのセルフマネジメントを高めれば、従業員のストレスが低減して本来のパフォーマンスを引き出すことができるかもしれません。従業員が心身共に充実した状態で仕事に取り組めるよう、セルフマネジメント力の向上にぜひ取り組んでみてはいかがでしょうか。
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