アンガーマネジメントとは?今必要な理由やメリットを解説
「怒り」の感情は誰しもが抱くものですが、その怒りをコントロールするスキルがあればどんなに快適に過ごせるでしょうか。人が怒りを覚える原因や、怒りの沈め方を知れば、今よりもっとポジティブに仕事と向き合えることもできるはずです。
本記事では、心理トレーニングの一種であるアンガーマネジメントについて詳しく解説します。
目次[非表示]
- 1.アンガーマネジメントとは、怒りの感情を適切にコントロールするスキル
- 2.心理学における怒りの感情
- 3.怒りの種類
- 3.1.持続性のある怒り
- 3.2.突如としてわき出る強い怒り
- 3.3.周囲に物理的な影響を及ぼす攻撃的な怒り
- 3.4.頻度の高い怒り
- 4.アンガーマネジメントに注目が集まる背景
- 5.アンガーマネジメントが職場で強く求められている理由
- 6.アンガーマネジメントのメリット
- 6.1.コミュニケーションがスムーズになる
- 6.2.マネジメント職が指導を適切に行える
- 6.3.従業員が働きやすくなる
- 6.4.生産効率が上がる
- 6.5.従業員の欠勤を抑えることが期待できる
- 7.アンガーマネジメントによる怒りの制御方法
- 7.1.怒りが生まれたら6秒間やり過ごす
- 7.2.怒りのスコア化と記録をする
- 7.3.怒りの原因から離れる
- 7.4.固定観念を捨てる
- 7.5.自分でコントロール下に置ける事柄に注力する
- 7.6.他者の立場に立って物事を考える
- 8.価値観が変化していく現代だからこそ、アンガーマネジメントは今後も重要なスキルとなる
アンガーマネジメントとは、怒りの感情を適切にコントロールするスキル
アンガーマネジメントとは、怒りの感情を適切にコントロールするトレーニングの一種です。怒りをただ単に悪いものと捉えず、場面によって適切にコントロールすることができるようになれば、自分自身や対人関係にとっても役に立つとして注目を集めています。
怒りという感情は、周囲にも波及するものです。誰かが怒りの感情をぶつけると、職場内にも悪い影響を及ぼすおそれがあるため、管理職や監督職といったマネジメント職にアンガーマネジメントが求められる場面も多いでしょう。
アンガーマネジメントを身に付けていないと、周囲に八つ当たりをしたり、自分を理解してくれない相手に対して威圧的な態度を示したりするなど、社会人として適切ではない行動をとる可能性があります。特に、職場はさまざまな人間関係が行き交うため、アンガーマネジメントを身に付ければ、仕事にも大いに役に立つはずです。
心理学における怒りの感情
人が日常生活を送る中で、怒りを感じる場面はさまざまあります。怒りを感じると、穏やかな気持ちではなくなりますが、怒りの感情は「自分を守るための感情でもある」と、心理学では捉えられています。
心理学から生まれたアンガーマネジメントでは、人が怒る理由やその経過を2段階に分けています。まずは、人が怒る経過について見ていきましょう。
第1次感情
第1次感情とは、負の感情に支配されて強くストレスを感じたり、ストレス反応を示したりする状態を指します。
負の感情とは、不安や恐怖、困惑、悲しさ、寂しさ、つらさ、落胆といったネガティブな感情を指します。
第2次感情
第2次感情とは、ストレスが許容範囲を超えて過度に蓄積した状態を指します。負の感情が爆発し、怒ったり、叱ったり、涙を流したりといった感情が表面化します。
重要なのは「第2次感情には、必ず第1次感情という前段階がある」と理解することです。第1次感情を踏まえて人は怒りを現します。アンガーマネジメントの第一歩は、自分の第1次感情を自覚することです。
【参照】一般社団法人 日本アンガーマネジメント協会「自分の1次感情を探ってみましょう」|一般社団法人 日本アンガーマネジメント協会(2012年8月)
https://www.angermanagement.co.jp/blog/blog_column/311
怒りの種類
笑う、喜ぶといったポジティブな感情にも種類があるように、怒りにも種類があることがわかっています。怒りは時間軸や属性で4つに分類可能です。それぞれどのような種類なのか確認していきましょう。
持続性のある怒り
過去に叱られた事を思い出し、そのときの感情がずっと自分の中で引っかかることの感情、それがいわゆる持続性の怒りです。
持続性のある怒りは、職場において根深くなりやすい特徴があるため注意が必要です。人間関係や評価、評定などに対しての自身と周囲とのギャップが大きな要因となることがあります。
突如としてわき出る強い怒り
人は時として突如としてわき出るような強い怒りに襲われることがあります。このような怒りは、その人の感情があからさまに言動に現れてしまうのが特徴です。
また、一過性の感情によって強い言葉を浴びせてしまうこともあります。突如としてわき出る強い怒りは、怒った当人も「どうしてあんなことを言ってしまったのだろう」といった後悔を生むことがあります。
周囲に物理的な影響を及ぼす攻撃的な怒り
周囲に物理的な影響を及ぼす攻撃的な怒りは、極めて注意が必要な感情です。人や物にあたるなど、周囲に対して物理的に影響を及ぼすため、最も危険なタイプの怒りであるともいえるでしょう。
相手に悪影響を与えるだけでなく怒りや恐怖を二次発生させるため、パワーハラスメントの主な原因ともなります。
頻度の高い怒り
頻度の高い怒りは、精神状態が不安定なときに、日常の些細な変化や刺激に対して過敏に反応することで生まれます。一時的だけでは済まずに、断続的に怒りがわいてしまうため、精神状態がさらに不安定になる危険性もあります。
アンガーマネジメントに注目が集まる背景
そもそもアンガーマネジメントは、アメリカで1970年代に、怒りの感情をマネジメントするための感情理解教育プログラムとして開発されました。今ではアメリカの教育機関のみならず、企業でも導入・活用されています。アンガーマネジメントを習得すると職場コミュニケーションが円滑になり、ストレス対策や生産性向上に役立つという認識が拡がったため、ビジネスの現場にも広がったのです。
価値観や常識が目まぐるしく変化している現代社会において「自分が思っていたことと違う」という感情から発生する怒りをコントロールするアンガーマネジメントは、これまで以上に求められていくスキルとなるでしょう。
【参照】一般社団法人 日本アンガーマネジメント協会「アンガーマネジメントとは?」|一般社団法人 日本アンガーマネジメント協会
https://www.angermanagement.co.jp/about
アンガーマネジメントが職場で強く求められている理由
職場は仕事の納期や他者とのコミュニケーションなどが必要であるため、家庭以上にアンガーマネジメントのスキルが必要となるのではないでしょうか。
マネジメント職の立場で例を挙げると、部下に依頼した仕事が未達の状態だったとします。それを知ったマネジメント職は、「納期は間近なのに、なぜまだ対応していないんだ」と怒りを感じたとしましょう。
しかし、アンガーマネジメントを身に着けていれば、自分の怒りをコントロールし、冷静な判断ができるようになります。その結果、「仕事を部下に依頼しすぎたのかもしれない」と他の視点を持つことも可能になります。
自分の一方的な理想は絶対的ではないということを理解すれば、「この部下が仕事をしやすくなるには、何が必要なのか」といった考え方の幅を広げることができ、怒りを鎮静していくことが期待できます。
また、マネジメント職は、部下からパワーハラスメントだと思われない、感じさせないためにも、相手への理解を深め、自制心を身に付けることが大切です。
これらの理由からも、アンガーマネジメントの習得は職場において非常に重要となってくるでしょう。
アンガーマネジメントのメリット
ビジネスの現場において、アンガーマネジメントはさまざまなメリットを生みます。具体的にどのようなメリットが期待できるのか見ていきましょう。
コミュニケーションがスムーズになる
怒りを前面に出す従業員ばかりの職場は、雰囲気がギスギスして居心地が悪くなってしまい、退職者が増える原因ともなりえます。
しかし、アンガーマネジメントを身に付けた従業員が増えれば、職場の居心地が良くなって退職率が下がる効果が期待できます。従業員に長年働いてもらう上でも、アンガーマネジメントは効果を発揮するはずです。
【参照】CANVAS Powered by マイナビエージェント「アンガーマネジメントとは?怒りタイプ診断とイライラ解消テクニック」| 株式会社マイナビ(2023年3月)
https://mynavi-agent.jp/dainishinsotsu/canvas/2021/01/post-38.html
マネジメント職が指導を適切に行える
自分自身の怒りに対して適切なマネジメントが行える人がマネジメント職になれば、業務の指導をする際にも部下や同僚に、自分の思うことや伝えたいことを適切な言葉で伝えやすくなります。
また、怒りを相手にぶつけるパワーハラスメントにも、アンガーマネジメントは効果的です。怒りっぽい人は、部下から悪い印象を抱かれやすくなりますが、アンガーマネジメントを身に付ければ、部下に怒りをぶつけることも減り、上司と部下が良好な人間関係を築きやすくなります。
従業員が働きやすくなる
自分が抱いてきた価値観や理想は一方的なものでもあり、絶対的なものではないと理解すると、物事に対して柔軟的に考えられ、視野が広がります。
アンガーマネジメントを身に付けた従業員は他人に対しても寛容になり、価値観の違いも受け止めやすくなるでしょう。
生産効率が上がる
円滑なコミュニケーションや、自分とは異なる価値観の受け入れが活発になれば、職場のチームも良好な人間関係となります。自ずとコミュニケーションが密になり、生産性の向上へとつながることも期待できます。
従業員の欠勤を抑えることが期待できる
自分の怒りをコントロールできない人は、ストレスが溜まってしまい胃潰瘍やメンタル疾患といった病気のリスクを抱えてしまう可能性があります。
しかし、アンガーマネジメントを身に付けておけば、病気の遠因ともなるストレスが溜まりにくくなります。体調不良による欠勤者が少なくなれば、社内の業務が滞ってしまうリスクを抑える効果も期待できるでしょう。
アンガーマネジメントによる怒りの制御方法
人が怒りを抑えるためには、具体的にどのような方法があるのでしょうか。続いては、アンガーマネジメントによる怒りの制御方法をご紹介します。
怒りが生まれたら6秒間やり過ごす
怒りの対処術に共通するのは、怒りにすぐさま反応しないことです。自分の怒りを感じたらまず6秒間待ち、怒りを静めていきましょう。
もちろん、怒りがすぐになくならなくても、少なからず理性的になることが期待できます。6秒を待つあいだは、「ここは、怒らなくても大丈夫」など、気持ちを落ち着けるための言葉を心の中で繰り返すことや、深呼吸をすることも効果的です。
怒りのスコア化と記録をする
6秒をカウントしているあいだには、その怒りを点数化するのもおすすめです。例えば、平穏な状態を0とし、人生最大の怒りを10として10段階で怒りに点数をつけます。この採点をしているあいだに、怒りを客観視することができるため、感情の沈静化に役立ちます。
また、「今日の怒りは3点程度で低い。今回は怒る必要がない」といったように、過去の怒りの点数と比較することで、現在の怒りをコントロールできるかもしれません。
怒りの原因から離れる
6秒ルールでも怒りが収まらないシーンでは、その場から物理的に距離を取るのも効果的です。怒りの感情が外に出る前に、飲み物を買いに外出するのもいいでしょう。
怒りの対象から気をそらし、移動の途中で怒りの感情がわいたこととは別のことを考えてみると、気もまぎれるはずです。
固定観念を捨てる
自分の中に「◯◯は、◯◯であるべき」といった固定観念が多く強いほど、怒りは生まれやすくなります。それらの固定観念は、あくまで個人の理想やこだわりであり、すべての人に通用するとは限りません。
そのため、自分の中にどのような固定観念があるかを整理し、「これは許容できる」「これは許容できない」といったように許容範囲を分けてみましょう。そして、「これなら許せる」という条件付きの範囲を少しずつ広げていくと、ストレスの軽減が期待できます。
これらの怒りを静める行動は、日々意識してトレーニングを積み重ねることで、スムーズに実践できるようになります。
自分でコントロール下に置ける事柄に注力する
自分でコントロールできる事柄にだけ注力するのも、怒りに感情を振り回されない上で効果的です。ここで大切なのは、自分でコントロールできない事柄についても、正確に把握することです。
例えば、電車が遅延した際、イライラが募ることもあるでしょう。しかし、電車の遅延は外的要因であり、自分でコントロールして解決できる問題ではありません。
そうした事態を受け入れて納得することも重要です。トラブルがあった際も「仕方がない」と受け止められるようになれば、怒りに溺れることも少なくなるはずです。
他者の立場に立って物事を考える
他者の立場に立って物事を考えるのも、アンガーマネジメントでは重要です。その際に大事なことは、相手をよく知ることです。相手を深く知らなければ、その人の立場で物事を考えるのは難しいでしょう。
他者の立場に立って物事を考えるには、相手から直接話しを聞きだすことが近道となります。会話の中で相手のパーソナリティを知り、「どのような気持ちで仕事をしているのか」といった情報をつかんでいけば、相手への理解が深まっていきます。
また、他者のことを調べておくのも効果的な方法です。相手のことを事前に知っておけば、初対面であっても相手の立場に立って物事を考えやすくなるはずです。その際、共通の知人から事前に情報を聞いておくと、より理想的といえます。
価値観が変化していく現代だからこそ、アンガーマネジメントは今後も重要なスキルとなる
アンガーマネジメントは、部下や職場環境に大きな影響を与えるマネジメント職には必須ともいえるスキルですが、一般の従業員にもより良い効果が期待できます。世の中の価値観や常識、固定概念が目まぐるしく変わっていく現代において、怒りのマネジメントはますます重要となっていくでしょう。アンガーマネジメントへの注目度は今後もより高まっていくはずです。
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