健康経営優良法人とは?認定基準とメリットを詳しく紹介
なぜ多くの企業は、健康経営優良法人を目指すのでしょうか。認定を受けるメリットをはじめ、企業が認可を求める理由や、避けては通れないデメリットなどを解説します。
目次[非表示]
- 1.健康経営優良法人とは?認定されるメリットを詳しく紹介
- 2.優良な健康経営を実践している企業に与えられる健康経営優良法人
- 3.健康経営優良法人2022の状況
- 4.健康経営優良法人の認可が求められる理由
- 4.1.少子高齢化による労働人口の不足
- 4.2.従業員の高齢化
- 5.健康経営優良法人認定のメリット
- 5.1.企業イメージが向上する
- 5.2.金利が優遇される
- 5.3.人材を確保しやすくなる
- 5.4.生産性が向上する
- 5.5.助成金を利用できる
- 5.6.公共調達が加点される
- 5.7.保険料の割引がある
- 6.健康経営優良法人認定を目指す上でのデメリット
- 6.1.データ化しにくく効果を可視化しにくい
- 6.2.費用がかかる
- 6.3.会社内で不満が出る可能性もある
- 7.健康経営優良法人の認定を受けるための要件
- 8.認定を目指すための施策や有効な仕組み
- 9.健康経営優良法人の認定は、地道な取り組みを重ねた上で目指す
健康経営優良法人とは?認定されるメリットを詳しく紹介
政府が推奨する「健康経営」は、従業員の健康に有効なことはもちろん、長期的には企業の経営を向上させる効果があるとして注目されています。
今回は、健康経営に取り組む企業の中でも、特に優良な取り組みを実践している大企業や中小企業を認定する「健康経営優良法人」について詳しく解説。認定を受けるメリットをはじめ、企業が認可を求める理由や、避けては通れないデメリットなどについても紹介します。
優良な健康経営を実践している企業に与えられる健康経営優良法人
健康経営優良法人は、特に優良な健康経営を実践している大企業、および中小企業に与えられる称号です。
元々は、東京証券取引所に上場している大企業の中から優良なものを選ぶ「健康経営銘柄」のみでしたが、未上場企業であっても優れた活動をしている企業が多数あることから、対象範囲を広げるべく2017年から健康経営優良法人の中小規模法人部門もスタートしました。
働き方改革の機運が高まる中、健康経営優良法人の認定を受けることは、企業自体のイメージアップ、ブランド力アップにつながります。
【参照】経済産業省「健康経営関連資料・データ」|経済産業省(2022年)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkokeiei_data.html
健康経営優良法人2022の状況
健康経営優良法人の認定を受けるには、従業員の健康維持・増進につながる有効な施策を実行した上で、申請・審査を経て認定されます。認定の有効期間は1年間のため、毎年計画的に健康経営を実践しなくてはなりません。
このことから、健康経営の実現には長期的な取り組みが必要であり、容易ではないことがわかるでしょう。
しかし、健康経営優良法人、および健康経営銘柄に選定される企業は、年々増加しています。「健康経営優良法人2022」の大規模法人部門では2,299法人、中小規模法人部門では1万2,255法人が認定されました。
認定初年度となる2017年は、中小規模法人部門の認定数が318法人だったことを踏まえると、この数年で認定企業数が一気に増えていることがわかります。
【参照】経済産業省「健康経営優良法人2022認定法人が決定しました!」|経済産業省(2022年3月)
https://www.meti.go.jp/press/2021/03/20220309002/20220309002.html
【参照】SHEM「「健康経営優良法人 中小規模 ブライト500認定」~従業員の健康と働き方に配慮した中小企業の証~」|非営利一般社団法人 安全衛生優良企業マーク推進機構(2022年)
https://shem.or.jp/kenkoukeiei-system
健康経営優良法人の認可が求められる理由
前項でふれたとおり、健康経営優良法人に認定される企業は右肩上がりに増加しています。多くの企業が申請を出し、認可を求めている背景には、どのような理由があるのでしょうか。ここでは、大きく2つの理由を紹介します。
少子高齢化による労働人口の不足
出生数が過去最少となる一方、総人口に占める高齢者の割合は着々と増加し、少子高齢化が進んでいます。2022年の労働力人口は6,902万人と、前年に比べて5万人の減少となっており、企業の人手不足はこれからも加速していくことでしょう。
人手不足が続くと、従業員一人あたりの業務が増えて負荷が大きくなり、生産性が低下します。すると、長時間労働や過重労働で心身のバランスを崩す従業員も増え、休職や退職が増える可能性も高まります。
人手不足を補う対策によってさらに労働環境が悪化する負のスパイラルに陥れば、企業経営に深刻なダメージを与えてしまうおそれがあるのです。
【参照】総務省統計局「労働力調査(基本集計)2022年(令和4年)平均結果の概要」|総務省統計局(2023年1月)
https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/ft/pdf/index.pdf
従業員の高齢化
少子高齢化によって、就業者の年齢構成も高齢者の割合が増えています。年齢を重ねれば、誰でも体力が落ち、健康リスクやケガのリスクが高まります。
特に、中小企業や地方の企業では従業員の高齢化が顕著であり、急な体調不良やケガ、病気による離脱(アブセンティーズム)、心身の不調で生産性が低下した状態(プレゼンティーズム)が問題視されています。
病気などで通院・入院する従業員が増えると、企業の社会保険料負担が増加する点についても考えなくてはなりません。健康経営で従業員の疾病予防、欠勤率低下に取り組むことは、医療費の負担削減にもつながるのです。
【参照】経済産業省「健康経営オフィスレポート」|経済産業省(2015年)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieioffice_report.pdf
健康経営優良法人認定のメリット
多くの企業はなぜ、健康経営優良法人の認定を求めているのでしょうか。ここからは、健康経営優良法人として認定されることのメリットを紹介します。
企業イメージが向上する
健康経営優良法人は、積極的に健康経営に取り組む企業にスポットライトをあてるものです。認定されると、認定ロゴマークを使えるようになり、取り組みに客観的な証明が生まれます。
従業員の健康を大切にしている企業として、ステークホルダーや金融機関に良いイメージを持ってもらうことができるでしょう。
金利が優遇される
会社を経営する上で不可欠な運転資金の融資を受ける際、健康経営優良法人には貸付利率の引き下げや特別利率での貸付、補償料の減額・免除といった優遇制度があります。
金融機関によってさまざまな措置があり、それぞれ条件が設定されているので、まずは取引のある金融機関に確かめてみるといいでしょう。
【参照】経済産業省「健康経営の推進及び健康経営銘柄2021 健康経営優良法人2021 について」|経済産業省(2020年9月)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/1_METI_R2kenkoukeieikensyoseido_setsumei_shiryo.pdf
人材を確保しやすくなる
健康経営優良法人に認定されると、従業員の心身の健康に配慮する企業であることが求職者にも伝わり、ホワイト企業であることを証明できます。企業選びにおいてワークライフバランスを重視する人は多く、優秀な人材の確保・採用につながるでしょう。
生産性が向上する
心身ともに健康で気力に満ちている人と、体調が悪く心が不安定な人では、前者のほうが仕事に集中できることは明らかです。一人ひとりの生産性が高まれば、やがて企業の業績も向上します。
助成金を利用できる
健康経営優良法人を目指すにあたり、資金捻出に悩む企業は多いでしょう。健康経営に取り組む意欲はあっても資金がなく、なかなか最初の一歩を踏み出せない場合に利用したいのが助成金です。健康経営企業が使える助成金・補助金については、下記のサイトに詳しく紹介しています。それぞれの助成金が「どのような助成金」で、「いくらもらえるのか」、さらには「受給のポイント」も具体的に解説していますので、ぜひチェックしてみてください。
公共調達が加点される
公共調達とは、国が発注する工事などにおいて行われる総合評価落札方式による事業者の募集のことです。公共調達の加点を得られれば、企業は入札審査で優位に立てるでしょう。
保険料の割引がある
保険会社によって異なりますが、健康経営優良法人用の「健康経営保険料率」や「健康経営割引プラン」を用意して、保険料を割り引く保険会社もあります。
【参照】経済産業省ヘルスケア産業課「健康経営の推進について」P117|経済産業省(2021年10月)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/211006_kenkokeiei_gaiyo.pdf
健康経営優良法人認定を目指す上でのデメリット
メリットの多い健康経営優良法人認定ですが、デメリットがないわけではありません。メリットだけでなくデメリットも把握することで、現実的な取り組みを進めていきましょう。
データ化しにくく効果を可視化しにくい
例えば、健康経営を開始してから欠勤率が下がったり、健康診断でメタボと診断される人が減ったりしても、それが健康経営によるものであると数値で証明するのは困難です。そのため、そのような改善を健康経営の結果と実感してもらうためには、長期的な啓蒙が必要となるでしょう。
健康経営は年単位で長期的に成果を追い、効果測定の情報を社内に公開し続けていくことが大切です。
費用がかかる
「従業員の健康が増進する」「社外からの評価が高まる」「企業の経営状況が改善する」といった健康経営の目的は、一朝一夕に達成できるものではありません。地道に従業員の健康をチェックすることから始めて施策を積み重ね、半年単位、年単位で少しずつ効果が実感できるようになるため、費用面でもそれなりの投資を覚悟しましょう。
会社内で不満が出る可能性もある
健康経営の実践には、従業員の協力が不可欠です。しかし、定期的なメンタルチェックや外部の専門家によるセミナー、ウォーキングイベントといった施策を、誰もが喜んで受け入れるとは限りません。
前述したとおり、健康経営の効果は最初からすぐに実感できるわけではないため、「業務を優先させたい」「就業時間以外に、イベントなどで拘束されたくない」と考える従業員もあらわれるかもしれません。
また、禁煙やダイエットなどの施策にインセンティブを設ければ、非喫煙者やメタボリックではない人から不公平だと反感を買う可能性もあります。
そのため、「従業員が望まない取り組みへの強制参加は避ける」「複数の施策からの選択制にする」といった対応をしながら浸透を図っていく必要があります。
健康経営優良法人の認定を受けるための要件
健康経営優良法人の認定を受けるには、大規模法人部門、中小規模法人部門それぞれの認定要件を満たす必要があります。どちらも、基本の5項目は下記のとおりです。
<健康経営優良法人の基本的な認定要件>
- 経営理念
- 組織体制
- 制度・施策実行
- 評価・改善
- 法令順守・リスクマネジメント(自主申告)
細かい認定要件については、下記の記事をぜひご覧ください。
認定を目指すための施策や有効な仕組み
健康経営を推進していく上では、具体的に下記のような施策が考えられます。
<健康経営優良法人認定のための施策>
- 健康経営を推進するチームを設置し、従業員の意識を高めるセミナーやイベントを実施
- ストレスや健康状態を把握するため、健康診断やストレスチェックの徹底
- 福利厚生の充実
また、人によっては、「成長できる環境がない」「新規事業を生み出したいが、アイディアがわかない」といったことがストレス原因でパフォーマンスが低下している可能性もあるため、従業員がいきいきと学べる環境を作ることも有効です。
従業員が一定期間、他社で就業する「企業間留学」や、現職に籍を置いたまま人手不足の企業などへ出向する「在籍型出向」など、新たな知見を得られる仕組みも積極的に活用しましょう。
健康経営優良法人の認定は、地道な取り組みを重ねた上で目指す
健康経営優良法人の認定を受けることには、従業員にも会社そのものにもメリットがあります。健康経営浸透のためには地道な努力と相応の時間が必要ですが、投資する価値は十分にあるといえるでしょう。
「マイナビ健康経営」は、健康経営優良法人に向けたプランや施策のご提案も可能です。健康経営優良法人の認定を検討している際は、お気軽にお声がけください。
<監修者> |