【2023年】健康経営優良法人制度の変更点を解説
「健康経営優良法人認定制度」への申請数・認定数が増加し続け、世間の注目を浴びています。健康経営2023の変更点とは?前年度からの変更点を中心に解説します。
目次[非表示]
- 1.健康経営2023の変更点とは?前年度からの変更内容を詳しく解説
- 2.健康経営優良法人認定制度とは、健康経営を実践している優良企業を顕彰する制度
- 3.健康経営優良法人2022の認定状況
- 4.健康経営優良法人の有効期間
- 5.健康経営優良法人2023の大きな変更点
- 5.1.変更点1 申請料金の有料化
- 5.1.1.<認定申請料>
- 5.2.変更点2 情報開示の促進
- 5.3.変更点3 業務パフォーマンスの評価・分析
- 5.4.変更点4 データ利活用の促進
- 6.中小規模法人部門(ブライト500)選定基準の変更点
- 7.健康経営銘柄2023の選定基準の変更点
- 8.健康経営の見える化には、無形資産の指標がカギ
- 9.健康経営においても、非財務情報の開示がカギとなる
健康経営2023の変更点とは?前年度からの変更内容を詳しく解説
コロナ禍を契機に、従業員の健康を中心とした環境改善を図る企業が増え、「健康経営」の言葉や考え方が広く浸透しました。健康経営に積極的に取り組む優良企業を認定する「健康経営優良法人認定制度」への申請数・認定数も、右肩上がりに増加しています。
そこで本記事では、「健康経営2023」について、前年度からの変更点を中心に詳しく解説します。
健康経営優良法人認定制度とは、健康経営を実践している優良企業を顕彰する制度
健康経営優良法人認定制度とは、国民の健康寿命延伸と適正な医療提供に向けた課題解決を行う日本健康会議の取り組みにもとづき、「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」の中でも、特に優良な企業を顕彰する制度です。
他の企業の見本となるような取り組みをしている企業を顕彰して可視化することで、健康経営の実践に前向きに取り組む企業を増やす効果があるほか、顕彰された法人の社会的評価が高まります。
なお、健康経営優良法人認定制度は、企業の規模によって「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」の2つに大別されます。
大規模法人部門
従業員数が多く、規模が大きい企業を対象としているのが大規模法人部門です。製造業なら従業員数301人以上、卸売業や医療法人、サービス業なら従業員数101人以上というように、具体的な従業員数は業種や法人分類によってさまざまです。
大規模法人部門で健康経営優良法人に認定された企業のうち、上位500社は「ホワイト500」の称号が与えられ、企業名が公表されることでより社内外に与える好影響が大きくなります。
また、大規模法人部門の中でも高い評価を受けた上場企業については「健康経営銘柄」に選定され、投資家に企業価値をアピールすることができます。
中小規模法人部門
大規模法人部門が設定する従業員数に満たない企業や、資本金または出資金額が一定額以下の企業は、中小規模法人部門に区分されます。
中小規模法人部門で健康経営優良法人に認定された企業のうち、上位500社は「ブライト500」の称号が与えられます。
健康経営優良法人2022の認定状況
健康経営優良法人2022の認定にあたって、大規模法人部門に該当する企業は、経済産業省が実施する「健康経営度調査票」に回答した上で、健康経営優良法人への申請を行う必要があります。なお、中小企業法人部門に該当する企業は、「健康経営優良法人認定申請書」に取り組み状況を記載すれば、健康経営優良法人認定審査への申請が可能です。
健康経営優良法人2022の認定に反映された2021年度健康経営度調査の大規模法人部門の結果と、健康経営優良法人2022の中小規模法人部門の申請・認定状況は、下記のとおりです。
大規模法人部門の2021年度健康経営度調査の結果
2021年度の大規模法人部門における健康経営度調査では、東京証券取引所プライム市場に上場している225社の84%が回答をしており、高い回答率となっていることがうかがえます。2021年度健康経営度調査(第8回)への回答数は前年度の2,523件から2,869件に増加し、前年比114%となっています。
なお、健康経営優良法人の認定数も1,801件から2,299件に増加し、前年比128%となりました。
中小規模法人部門の健康経営優良法人2022の申請・認定状況
中小企業部門においては、健康経営優良法人2022への申請数が前年度の9,403件から1万2,849件に増加し、前年比137%となっています。健康経営優良法人2022の認定数についても、7,934件から1万2,255件へと大幅に増加し、前年比154%です。
これらの結果を見てみると、健康経営に関心を持ち、取り組みを始める企業が年々増加していることがわかります。コロナ禍を経て健康意識が高まる中、新たに健康経営に取り組む企業はますます増えていくでしょう。
福利厚生サービスを展開する心幸ウェルネス株式会社が実施した健康経営に取り組む経営者の意識調査でも、すでに健康経営に取り組んでいる企業の約8割の経営者が「健康経営への取り組みが業績の向上につながった」と回答し、2023年の健康経営により多くの予算を投入するとしています。
【参考】経済産業省「健康経営度調査について」|経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeieido-chousa.html
健康経営優良法人の有効期間
健康経営優良法人に認定された後、その効力が継続するのは1年間です。一度認定を受けたからといって、取り組みへの注力度合いを下げたり、取り組みをやめてしまったりすると、翌年度の審査では「健康課題の解決に向けた根本的な取り組みがなされていない」として、認定を受けられない可能性があります。継続的に健康経営優良法人の認定を目指す場合、長期的に企業の健康課題に取り組み、従業員の健康を維持する必要があります。
毎年アップデートされる申請までのスケジュールや評価項目、変更点などを確認して、計画的に施策を実行するようにしましょう。
健康経営優良法人2023の大きな変更点
2022年7月末、健康経営度調査や認定基準の検討を経て「健康・医療新産業協議会 第7回健康投資ワーキンググループ」が開催され、「健康経営優良法人2023」の認定要件について素案がまとめられました。その後、8月末から、大規模法人に向けた健康経営度調査と、中小規模法人を対象とした申請受付が開始され、10月半ばに申請を締め切っています。
ここからは、健康経営優良法人2023と健康経営優良法人2022とを比較して、2022からの変更点について確認していきましょう。
2022年度からの大きな変更点は、「申請料金の有料化」「情報開示の促進」「業務パフォーマンスの評価・分析」「データ利活用の促進」の4つです。
【参考】経済産業省「健康投資ワーキンググループ」|経済産業省(2022年12月)
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/index.html
変更点1 申請料金の有料化
これまでの健康経営優良法人認定制度は、経済産業省が運営する国の事業でした。2023年からは、民間事業者のアイディアを活かしてさらなる普及を図る目的で、民間事業者に補助金を交付して運営を委託する形に変更されています。
公募の結果、2023年は日本経済新聞社に運用が委託され、今後は同社が立ち上げた健康経営優良法人認定事務局ポータルサイト「ACTION!健康経営」上から認定申請を行います。また、運用コストを回収するため、認定申請料が有料となりました。
<認定申請料>
- 大規模法人部門…8万8,000円(税込)/件
- 中小規模法人部門…1万6,500円(税込)/件
認定審査を受けるには、申請後に届く請求書を確認し、指定の期日までに指定口座への振込を済ませる必要があります。
変更点2 情報開示の促進
大規模法人部門に該当する企業が健康経営調査に回答すると、フィードバックシートが返却されます。フィードバックシートには、健康経営度評価結果(総合順位や評価)、評価の内訳(経営理念・方針、組織体制、制度・施策実行、評価・改善、法令順守・リスクマネジメント)などが記載され、自社の健康経営のブラッシュアップに活かすことができます。
2023年からは、この評価の内訳に「経営層のコミットメント」や「施策のアウトプット」に関する定量的な情報が認定要件に追記されることになりました。
変更点3 業務パフォーマンスの評価・分析
健康経営が従業員の心身にどのような影響を及ぼしているのかを探るため、アブセンティーイズム(傷病による欠勤)、プレゼンティーズム(出勤はしているが、健康上の問題によって完全な業務パフォーマンスが出せない状況)、ワークエンゲイジメント(仕事に対するポジティブで充実した心理状態)の経年変化、およびその測定方法や開示状況についての設問が認定要件に追加されました。
変更点4 データ利活用の促進
4つ目の変更点も認定要件に関する変更です。企業から保険者に提供される40歳以上の従業員の健診データに加えて、40歳未満の従業員の健診データについても、情報提供の状況について開示が求められるようになりました。
また、マイナポータルで健診結果が閲覧可能になることから、健康保険組合など保険者と連携した閲覧環境の整備、および従業員への周知が進んでいるか否かも問われています。
中小規模法人部門(ブライト500)選定基準の変更点
中小規模法人部門において、特に優れた企業に与えられる「ブライト500」の称号について、2023年から評価項目が追加されています。具体的には、従来の社外への情報発信に加え、PDCAの取り組み状況、経営者・役員の健康経営への関与度合いについても評価が行われるようになりました。
選択項目は前年同様に15項目あり、そのうち13項目の適合が条件となることは、2022年までと変わりません。ただし、それぞれの配点のウェイトが若干異なっています。
健康経営優良法人2022選定の配点ウェイト
- 健康経営の評価項目における適合項目数(13項目以上に対し1点ごとに加点)…ウェイト3
- 健康経営の取り組みに関する自社からの発信状況(自社サイトへの掲載等)…ウェイト3
- 健康経営の取り組みに関する外部からの委託による発信状況…ウェイト1
健康経営優良法人2023選定の配点ウェイト
- 健康経営の評価項目における適合項目数(13項目以上に対し1点ごとに加点)…ウェイト3
- 健康経営の取り組みに関する自社からの発信状況(自社サイトへの掲載等)…ウェイト2
- 健康経営の取り組みに関する外部からの委託による発信状況…ウェイト1
- PDCAに関する取り組み状況…ウェイト3
- 経営者・役員の関与度合い…ウェイト1
【参照】全国健康保険協会広島支部「健康経営優良法人サポートブック2023(中小規模法人部門)」|協会けんぽ(2022年9月)
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/hiroshima/kenkoudukuri/2022082605.pdf
健康経営銘柄2023の選定基準の変更点
東京証券取引所の上場企業でないと選定されない健康経営銘柄ですが、「健康経営度が上位20%以内」の企業を候補としていた健康経営銘柄は、2023年度から「健康経営優良法人(大規模法人部門)申請法人の上位500位以内」、かつ選定条件を満たしていて重大な法令違反のない企業が候補として選定されるようになりました。
また、申請する法人数の増加に伴い、健康経営銘柄のブランド価値を維持するため、1業種最大5枠までの制限を設けています。
健康経営の見える化には、無形資産の指標がカギ
企業の経営資産には、「ヒト」「モノ」「カネ」といった有形資産のほか、情報やブランド力、信用力、ノウハウ、スキルといった無形資産があります。従来、企業価値は有形資産を中心に測られてきましたが、近年は人的資本を含めた無形資産も含めて、包括的な評価がされるようになりました。
健康経営に取り組んだ成果として生じる、健康づくりに前向きな職場風土も無形資産のひとつです。従業員がお互いの健康に気を配っていたり、健康診断やストレスチェックなど産業保健活動への参加率が高かったりする企業は、健康経営によって良い風土が生まれ、その風土によって健康経営の成果が出やすくなっているといえるでしょう。健康課題が解消し、従業員がいきいきと働ける環境が構築されることによってステークホルダーからの評価が高まれば、株価の上昇や企業価値の向上も期待できます。
しかし、無形資産はその名のとおり形がなく、捉えどころがないものです。そのため、体感として「健康意識が高い」「みんなが元気に働いている」と感じられることはあっても、その状態を言語化・指標化して積極的に高めていくのは容易ではありません。
そこで役立つのが、健康・医療新産業協議会「第6回 健康投資健康投資ワーキンググループ」において、産業医科大学の森晃爾教授が挙げている「健康経営指標として見なしうる無形資産の指標」です。
健康経営指標として見なし得る無形資産の指標
- Perceived Organizational Support:従業員は、ウェルビーイングの実現に向けた会社の支援姿勢を、どのように認知しているか?
- Workplace Social Capital:従業員どうしの結びつきや信頼関係は、どの程度強いか?
- Psychological Safety:従業員は、どの程度、職場で安心して自分の考えを述べることができているか?
これら3つの指標は、パフォーマンス指標や離職意識など、経営指標の先行要因となることがわかっています。健康経営の評価を高めるための指標として活用し、開示情報の充実を図ってみてはいかがでしょうか。
【参考】経済産業省「第6回 健康投資ワーキンググループ」|経済産業省(2022年9月)
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/006.html
【参考】産業医科大学 産業生態科学研究所 産業保健経営学研究室「健康経営の今後のチャレンジ 健康経営の成果開示に関する私見」|産業医科大学(2022年9月)
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/pdf/006_s02_00.pdf
健康経営においても、非財務情報の開示がカギとなる
人材を資本として価値を高め、企業価値向上につなげる人的資本経営に注目が集まる中、企業の無形資産である人的資本情報の開示が求められるようになりました。健康経営の取り組みにおいても、業務パフォーマンスや職場風土といった無形資産をステークホルダーに向けて開示することが重要です。
そのため、これからの企業は中長期の経営戦略と健康経営戦略とを連動させ、経営視点で健康経営を実践していくことが求められていきます。
健康経営を推進する上での困り事があれば、「マイナビ健康経営」にご相談ください。
健康経営の推進をさまざまなサービスを活用してサポートいたしますので、お気軽にお声がけください。
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