プロフェッショナル人材事業とは?中小企業の活用事例や顧問との違いを解説
プロフェッショナル人材事業の概要やメリットを紹介。中小企業の事業者の方に向けてプロフェッショナル人材事業の活用の仕方や顧問との違い、事例などを解説します。
目次[非表示]
- 1.中小企業を助けるプロフェッショナル人材とは?顧問との違いも解説
- 2.攻めの経営に転じたい地方企業を後押しする、プロフェッショナル人材
- 2.1.経営人材・経営サポート人材
- 2.2.新事業立ち上げ・販路開拓人材
- 2.3.生産性向上人材
- 3.プロフェッショナル人材と顧問の役割
- 4.なぜ、地方の中小企業にプロフェッショナル人材が必要なのか
- 5.内閣府が先導するプロフェッショナル人材事業
- 6.プロフェッショナル人材確保事業費補助金
- 7.プロフェッショナル人材確保事業の活用事例
- 7.1.びわ湖放送株式会社の事例:異業種の営業経験を活かして効果的な営業スタイルを構築
- 7.2.株式会社YK プランニングの事例:豊富なシステム開発経験を活用し、自社サービスの発展に貢献
- 7.3.株式会社バンズの事例:効率化業務の経験をもとに、生産性向上と働きやすさを両立するDXを実現
- 7.4.株式会社龍泉刃物の事例:コンサルティング経験とウェブマーケティングの知見で北米へ販路拡大
- 8.プロフェッショナル人材の活用で、攻めの経営を実現しよう
中小企業を助けるプロフェッショナル人材とは?顧問との違いも解説
各地域に質の高い雇用を生み出す効果を期待して、政府が推し進めている「プロフェッショナル人材事業」。聞いたことはあるけど、具体的な内容まではよくわからないという方も多いのではないでしょうか。
プロフェッショナル人材事業は、地方の中小企業の経営に役立つ取り組みです。本記事では、プロフェッショナル人材事業の概要からメリット、活用の仕方、顧問との違い、事例まで、詳しく解説します。
【参照】内閣府事業 プロフェッショナル人材事業「外部人材の活用で地域企業が変わる」|内閣府(2020年)
https://www.pro-jinzai.go.jp/jirei/pdf/guidebook_R2.pdf
攻めの経営に転じたい地方企業を後押しする、プロフェッショナル人材
近年、よく耳にするようになったプロフェッショナル人材。政府や地方自治体も、こぞってプロフェッショナル人材の登用に力を入れています。
プロフェッショナル人材と聞くと、何らかの特別なスキルや、突出した能力を持った人材をイメージする人が多いのではないでしょうか。内閣府は、「攻めの経営」に転じたい地方企業を後押しする存在としてプロフェッショナル人材を位置づけており、必ずしも希少なスキルや高度な技術を持っている人ばかりではありません。
内閣府によれば、プロフェッショナル人材は「経営人材・経営サポート人材」「新事業立ち上げ・販路開拓人材」「生産性向上人材」の3つに分類されています。各分類はどのように定義されているのか、ひとつずつ見ていきましょう。
経営人材・経営サポート人材
経営人材・経営サポート人材とは、経営者を支える右腕として企業マネジメントに携わる人材(将来の経営幹部候補も含む)を指します。企業経営や大手企業での事業部管理等のマネジメント経験者などが想定されます。
新事業立ち上げ・販路開拓人材
新事業立ち上げ・販路開拓人材は、新規事業や海外現地事業の立ち上げなど、新たな事業分野や販路を開拓し、売上増加等の効果を生み出してきた人材を指します。商社等での営業や新規事業の立ち上げ経験者、海外事業企画等のグローバルビジネスのマネジメント経験者などが想定されます。
生産性向上人材
生産性向上人材とは、開発や生産等の現場で新たな価値(新たな製品開発や生産工程の見直し等)を生み出すことのできる人材です。大手企業の工場長等の経験者、技術者として開発リーダーを経験した人などが想定されます。
【参照】内閣府「プロフェッショナル人材戦略ポータルサイト」|内閣府(2015年12月)
https://www.pro-jinzai.go.jp/about/scheme.html
プロフェッショナル人材と顧問の役割
プロフェッショナル人材の要件を見ると、顧問と似ていると感じる人もいるのではないでしょうか。しかし、その役割は実は異なります。具体的にプロフェッショナル人材と顧問の役割には、どのような違いがあるのかご紹介します。
顧問の役割:経営に関する意思決定の権限はないが、特定分野のアドバイスや指導を行う
顧問は、企業や団体、政府などの補佐や指導にあたり、企業経営や事業戦略、政府の方針などについて、みずからの専門性やビジネス経験を活かしてアドバイスや指導を行うその道の権威や学識者、有識者です。ブレーン、アドバイザーなどと呼ばれることもあります。
顧問は会社法上で定められている役職ではないため、すべての企業に設置されているとは限らず、また設置されている企業でも経営に関する意思決定をする権限は通常ありません。また、株主総会での議決権も持たないのが一般的です。顧問は相談役に近いように見えますが、相談役のほうがより名誉職的な意味合いが強く、顧問はもう少し現場に近いところで問題解決に携わるイメージといえるでしょう。なお、その顧問も一般的にはプロフェッショナル人材ほどは実務には関わらない傾向があり、経営層にアドバイスを求められたら答えるといった立ち位置が多いようです。
なお、社外出身者が正社員採用や業務委託の契約を交わすプロフェッショナル人材とは異なり、顧問は元会長や元社長、退任した役員などが就任することが日本では慣例としてありました。現在では、適切な情報開示のもとで顧問の専門的かつ客観的な視点を活用する企業も見られるようになっており、専門的で客観的な助言ができる「外部顧問」へのニーズも高まっているようです。
【参照】マイナビ顧問「私たちがご紹介する顧問とは」株式会社マイナビ(2017年12月)
https://komon.mynavi-agent.jp/about/komon.html
プロフェッショナル人材の役割:地域企業の右腕、実務者として企業の成長を後押しする
プロフェッショナル人材は、前述のような外部登用の顧問に近い存在であるといえます。プロフェッショナル人材と顧問との違いを挙げるとすれば、プロフェッショナル人材は地域企業の右腕としてその成長を後押しできる力を持っていることが重要視されており、事業の専門家でなくても良いという点です。
地域企業に貢献できる能力さえあれば、副業人材、兼業人材を登用することもひとつの手段でしょう。近年は副業が認められている大企業も増えており、潜在的なプロフェッショナル人材は多数いると考えられます。
プロフェッショナル人材の候補者と地域企業のニーズが合致すれば、「必要なプロジェクトだけ」「一定の期間だけ」といった契約の仕方も可能であり、費用を抑えて優秀な人材を活用できるのは大きなメリットとなります。
【参照】厚生労働省「労働基準 副業・兼業」|厚生労働省(2022年10月)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html
なぜ、地方の中小企業にプロフェッショナル人材が必要なのか
優秀な人材ほど、大学入学を機に地方を離れてそのまま都市部で就職をしたり、就職の際に東京など都市部の大企業を志したりする傾向があり、人口減少が進む地方の企業は人手不足が深刻化しています。蓄積されてきた知見や希少な技術があっても、それを継承する人材やイノベーションを起こす人材がいなければ、優れた企業であっても経営を存続させることはできません。
加えて、近年、世界はVUCAの時代に突入したといわれています。VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った言葉で、従来の経験値が活用できない、数年先の未来すら読めない状態を示しています。
現に今の社会は、テクノロジーの進化によって目まぐるしく市場の状況が変わり、社会の仕組みや価値観すらも短期間で変化しているのです。さらには、新型コロナウイルス感染症の拡大に代表されるような予測困難な事象などによって、未来は曖昧さを増しているともいえます。
経済の規模が小さい地方の企業がこうした時代を乗り越えていくには、地域の外にある多様な資本との提携・協力が欠かせません。地方に眠る優れた企業、地力のある企業を目覚めさせ、経営を守りから攻めへと転換させるためには、プロフェッショナル人材を登用する必要があるのです。
プロフェッショナル人材を登用すれば、元々力を持っている地方の中小企業が新規事業や新たな販路の開拓に乗り出す可能性も高まり、自ずと質の高い雇用が生まれ、地域経済の活性化へとつながっていくことも期待できます。
内閣府が先導するプロフェッショナル人材事業
プロフェッショナル人材事業は、一言でいうと「攻めの経営」への転換を促す取り組みです。各都道府県にプロフェッショナル人材戦略拠点を設置し、プロフェッショナル人材戦略マネージャーをはじめとする拠点のスタッフが地域企業と対話を積み重ね、従来の事業からの脱却や新規事業開発、新販路開拓といった攻めの経営への転換をフォローします。そして、都市部大企業のプロフェッショナル人材の出向・研修による人材交流を促進し、優秀な人材のマッチングをサポートしています。
2022年9月20日現在で、プロフェッショナル人材事業とパートナーシップを結んでいる企業は、計46社です。例えば、旭化成株式会社、サントリーホールディングス株式会社、株式会社大丸松坂屋百貨店、丸紅株式会社、株式会社みずほフィナンシャルグループ、ヤマハ発動機株式会社など、幅広い業種の企業がパートナーシップ企業となっています。
【出典】内閣府「プロフェッショナル人材戦略ポータルサイト」|内閣府(2022年9月)
https://www.pro-jinzai.go.jp/about/scheme.html#scheme03
プロフェッショナル人材確保事業費補助金
地域の中小企業がプロフェッショナル人材確保事業を活用して人材を採用する場合、各自治体から補助金が支給されます。自治体内に設置されているプロフェッショナル人材戦略拠点を利用してU・I・Jターンの人材を雇用した場合、もしくは副業・兼業の形で確保した場合に支給するものです。
プロフェッショナル人材確保事業費補助金の主な要件は、下記のとおりです。
プロフェッショナル人材確保事業費補助金の主な要件
- 対象経費:有料職業紹介事業者の仲介によって、U・I・Jターンの人材を採用し、雇用に至った場合の人材紹介手数料
- 補助率(額):補助対象経費に掲げた経費の2分の1以内
- 補助限度額:プロフェッショナル人材1人あたりの補助限度額(自治体によって異なる)
自治体によっては、プロフェッショナル人材が県外から県内に移住していることや、県内の事業所で正規雇用することなどを要件として設定している場合もあります。
【参照】静岡県「プロフェッショナル人材確保事業費補助金(令和4年度)」|静岡県(2022年3月)
https://www.pref.shizuoka.jp/sangyou/sa-220/02prohojo.html
プロフェッショナル人材確保事業の活用事例
プロフェッショナル人材確保事業を活用すると、地域企業にどのような変化が起こるのでしょうか。「攻めの経営」への転換と成長を実現した企業の事例をご紹介します。
びわ湖放送株式会社の事例:
異業種の営業経験を活かして効果的な営業スタイルを構築
滋賀県で唯一の民間テレビ局びわ湖放送株式会社は、インターネットの登場で放送業界を取り巻く環境が大きく変わり、4K・8Kなど新たな技術が登場したことで、売上に伸び悩んでいたそうです。同企業は、滋賀県内事業所を対象とした新規スポンサーの獲得と、新たな事業分野への進出を目指して、コミュニケーション力と提案力に長けた営業人材を登用するためにプロフェッショナル人材確保事業を活用しました。
採用されたプロフェッショナル人材は、専門商社での法人営業の経験が豊富な人材であり、実際に異業種の目線でより効果的な営業スタイルを同社にて構築。新規営業先へのアプローチからクロージングの手法、人材育成までを強化してもらい、新規顧客獲得の成果につながりました。
新たな事業分野への進出も検討する同社にとって、異業種出身ならではの目線と発想は経営に新しい方法論を根づかせたようです。
株式会社YK プランニングの事例:
豊富なシステム開発経験を活用し、自社サービスの発展に貢献
税理士法人を母体とし、会計事務所および一般企業向けシステム開発、販売、保守、コンサルティングを行う山口県の株式会社YK プランニングは、会計ソフトの仕訳データの標準化と財務分析・経営計画策定ができるソフトを開発し、特許を取得しています。
しかし、クラウドサービスや通信インフラの急激な発展で、常に自社製品の陳腐化に危機感を持っていたそうです。そこで、会計事務所から国内中小企業経営者にターゲットを拡大し、クラウドサービスと自社開発ソフトの展開に取り組むべく、プロ人材の活用に至りました。
同社は多様な業界でシステム開発を経験し、故郷の山口県に根を下ろして働きたいと考えていたエンジニアをプロフェッショナル人材確保事業によって採用。当人のスキル獲得だけでなく、外部パートナーとの協業開発もスムーズにマネジメントをしていく姿勢が、組織全体に活性化を生んでいるようです。
株式会社バンズの事例:
効率化業務の経験をもとに、生産性向上と働きやすさを両立するDXを実現
ダスキンの群馬地域供給工場として、モップ、タオル、マットなど、レンタル製品の加工を行う株式会社バンズは、ダスキンの支給システムにもとづいて生産管理を行っていました。しかし、現場の意見を実現した生産管理ができればより生産性が向上し、職場環境も整備できるとも考えていたようです。
ただし、その目標を達成するには、有用な生産管理ソフトの選定といった専門知識が必要でした。社内では人材を調達できなかったため、同社はプロフェッショナル人材事業を活用。採用したのは、約10年間、精密機器メーカーで生産の効率化業務に従事した後、独立をした人材でした。
新たなシステム導入を伴う同社のDXは一大プロジェクトです。しかし、当人材はプロジェクトリーダーの社員と連携しながらプロジェクト推進に尽力。その結果、社員たちが自分で工夫して使いこなし、現場の知見を投入して進化させていけるプラットフォームが完成したそうです。
株式会社龍泉刃物の事例:
コンサルティング経験とウェブマーケティングの知見で北米へ販路拡大
株式会社龍泉刃物は、包丁各種やカトラリー、ステーショナリーなどを製造・販売する企業です。700年の歴史を持つ伝統産業で培ってきた刃物技術をベースに、スタイリッシュなデザインを施したステーキナイフで知られています。しかし、ステーキナイフなどの刃物はメンテナンスが不可欠で、販売後のサポートがネックとなり、販路を拡大できずにいました。
同社の経営課題は、メンテナンス技術のある北米の販売店の開拓です。そこで同社は、刃物の技術を持った販売店を調査し、その販売店との契約までつなげられるプロ人材を求めて、プロフェッショナル人材確保事業にジョイン。東京で旅館ホテル向け訪日観光のコンサルティングを手掛け、ウェブマーケティングにも造詣が深い人材を採用しました。
結果として、その人材は刃物のメンテナンスを行えるカナダの販売店との契約にこぎつけることに成功し、海外事業の売上がアップ。同社はアメリカ・カナダ全土での販路拡大に向けてリサーチを行っています。
【参照】内閣府事業 プロフェッショナル人材事業「プロフェッショナル人材活用ガイドブック」(令和3年度版)|内閣府(2021年)
https://www.pro-jinzai.go.jp/jirei/pdf/guidebook_R3.pdf
プロフェッショナル人材の活用で、攻めの経営を実現しよう
企業の経営を停滞させる要因を見つけ出して解決し、攻めの経営に転じるには、時として外部顧問やプロフェッショナル人材のような外部の才能が必要となることもあります。プロフェッショナル人材確保事業は、そのマッチングを推進しており、日本の地域経済をこれからも活性化させていくでしょう。
最後にご紹介した成功事例にもあるとおり、プロフェッショナル人材の活用は攻めの経営に有効といえます。
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