産業雇用安定助成金とは、新型コロナウイルス感染症にともなう経済上の理由により、事業活動を一時的に縮小せざるをえない場合に、従業員の雇用を維持するための助成金です。従業員を自社に在籍させたままほかの企業に勤務してもらう「在籍型出向」を行う企業が対象で、出向元(出向させる側)と、出向先(受け入れる側)の企業に対して支給されます。なお、出向期間終了後は従業員が出向元に戻って働くことが前提となります。
助成対象となる主なパターンは3つです。1つ目は、就業規則や出向契約書の整備費用、出向のための教育訓練など、出向前に行う事前準備に対する「出向初期経費助成」。2つ目は、出向中に生じた賃金・教育訓練など所定の経費に対して最大2年まで助成する「出向運営経費助成」。そして3つ目は、出向から復帰した従業員に対してスキル・経験をブラッシュアップさせるためにOff-JTを行った場合(On-JTは不可)に、経費やOff-JT期間中の賃金の一部を助成する「出向復帰後訓練助成」です。
このうち、「出向初期経費助成」と「出向運営経費助成」は、出向元・出向先双方が助成対象となり、「出向復帰後訓練助成」は出向元のみが対象となります。
助成額や助成率は、助成金の種類によって異なります。また、これまで「最長1年間」だった支給期間が、2022年10月1日より「最長2年」に延長されました。
助成を受けるためには、出向元と出向先で、出向する従業員の処遇や賃金について取り決めを行うことに加えて、出向する本人の同意も必要です。また、出向元・出向先双方が「出向実施計画届」を作成する必要があるなど細かな要件が定められています。
※産業雇用安定助成金(雇用維持支援コース)は2023年10月31日限りで廃止となりました。
【参照】
<監修者> 丁海煌(ちょん・へふぁん)/1988年4月3日生まれ。弁護士/弁護士法人オルビス所属/弁護士登録後、一般民事事件、家事事件、刑事事件等の多種多様な訴訟業務に携わる。2020年からは韓国ソウルの大手ローファームにて、日韓企業間のM&Aや契約書諮問、人事労務に携わり、2022年2月に日本帰国。現在、韓国での知見を活かし、日本企業の韓国進出や韓国企業の日本進出のリーガルサポートや、企業の人事労務問題などを手掛けている。 |