育休手当はいくらもらえる?支給額の計算方法や申請の流れを解説
従業員が育休を取得すると、育休手当を受給することができます。育休期間中は給与が無給・減給になるケースが多いため、育休手当は子供が産まれたばかりの家庭の生活を支える大切な収入源となるでしょう。
しかし、育休取得を検討している人の多くは、育休手当がいくら程度であり、いつ支給されるのかといった多くの気がかりを抱いているのではないでしょうか。働き手の確保が難しい現在、働き盛りの従業員が安心して働ける環境をつくる意味でも、育休手当は企業にとっても大きなメリットとなるはずです。
本記事では、育休手当の概要や対象者のほか、期間、支給額などについて詳しく解説。育休手当支給日の目安や税金・社会保険の扱い、育休手当の申請手続きなどについても紹介していきます。
育休手当にまつわる疑問点を解消し、従業員が気持ち良く働き続けられる職場環境づくりの一助として本記事をご活用ください。
目次[非表示]
- 1.育休手当は、育児休業取得の際に受け取れる手当のこと
- 2.育児手当の支給対象者
- 2.1.育休手当の対象とならないケース
- 3.育休手当の期間
- 3.1.育休手当は1歳の誕生日の前々日まで
- 3.2.育休期間を延長できる条件
- 4.育休手当給付金はいくら支給されるのか?
- 4.1.育休手当給付金の計算方法
- 4.2.育休手当給付金の計算例
- 4.3.育休手当給付金の支給限度額
- 5.育休手当支給日の目安
- 6.育休手当受給時の税金と社会保険
- 7.育休手当の申請手続き
- 7.1.育休手当に必要な書類
- 7.2.育休手当の流れ
- 8.育休手当は健康経営の観点からも有効
育休手当は、育児休業取得の際に受け取れる手当のこと
育休手当とは、育児休業を取得した際に受け取ることのできる手当であり、正式名称を「育児休業給付金」といいます。会社の就業規則によりますが、特別な規定がない限り、育休中は無給もしくは減給となることが想定されます。
そこで国は、働く親が安心して育休を取得できるよう、育休手当を規定しました。育休手当があれば育休中の生活基盤が安定するため、国は育休の積極的な取得を支援しています。
なお、育休手当を規定する育児・介護休業法は、年を追って改正されています。2022年10月の改正では1歳までの育児休業を分割で取得できるようになりました。それまで育児休業は原則1回しか取得できませんでしたが、2022年10月からは父親・母親それぞれ2回までの取得が可能となっています。
また、2023年4月の改正にあたって、1,000人以上の労働者を常時雇用している事業主には男性の育児休業等の取得の状況を年1回公表することが義務付けられています。改正はこれから先も行われていく可能性があるため、育児・介護休業法については定期的なチェックをおすすめします。
【参照】厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)「育児・介護休業法令和3年(2021年)改正内容の解説」|厚生労働省(2022年3月)
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/ikuji/
【参照】厚生労働省東京労働局「令和5年(2023年)4月1日施行の内容」|厚生労働省
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/content/contents/001122221.pdf
育児手当の支給対象者
育休手当を受け取ることのできる対象者は、性別に関係なく、1歳未満の子供を育てるために育休を取得する雇用保険の加入者本人です。雇用保険加入者が対象のため、自営業やフリーランスの方は対象外となります。
なお、育休手当の対象となるには、一定の条件があります。
育児手当を受給するには、下記の要件を全て満たすことも支給対象の条件となっているため、確認をしておきましょう。
<育児手当受給の要件>
- 育児休業開始日前2年間に、11日以上働いた月数が12カ月以上あること
- 育児休業期間中に毎月、休業開始前の1カ月あたりの賃金の8割以上の賃金が支払われていないこと
- 就業日数が支給単位期間(1カ月)ごとに10日(10日を超える場合は就業時間が80時間)以下であること
- 有期雇用契約で勤務している場合は、上記3つの要件に加えて、同じ事業主のもとで1年以上継続して働いており、子供が1歳6カ月に達する日までにその労働契約が満了することが明らかでないこと
上記の要件を満たした上で育休を取得すれば、母親、父親を問わず育休手当を受給することができます。
【参照】厚生労働省 都道府県労働局「育児休業、産後パパ育休や介護休業をする方を経済的に支援します」|厚生労働省(2022年12月)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/pdf/ikuji_r02_01_04.pdf
育休手当の対象とならないケース
育休手当は、前述の要件を全て満たしていれば何度でも受給できるわけではありません。下記のようなケースは育休手当の対象とならないため、注意が必要です。
<育休手当の対象から外れるケース例>
-
育児休業が始まる時点で退職する予定がある
育休手当は、育児休業終了後に職場へ復帰することを条件とした給付金です。育児休業が始まる時点で退職の予定がある場合は、育休手当の支給対象となりません。
-
育休中でも給与が8割以上支給されている
育休手当の1支給単位期間に「休業開始時賃金日額×支給日数の80%以上」の賃金が会社から支払われている場合、支給額は0円となります。
【参照】厚生労働省「Q&A~育児休業給付~」|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158500.html
育休手当の期間
育休手当はどれくらいの期間、受給することができるのでしょうか。具体的な育休手当の対象期間や、育休期間を延長できる条件は下記のとおりです。
育休手当は1歳の誕生日の前々日まで
育休手当の対象期間は、基本的に「育休の取得中」です。子供が1歳になる日の前日まで支給されますが、民法第143条の規定では、満年齢に達するのは誕生日の前日とされています。そのため、実際の支給期間は、1歳の誕生日の前々日までとなっている点は押さえておきましょう。
なお、支給は育休の取得日数を対象としているため、自己都合で育休の期間を短縮すると、育休手当の支給期間も同じように短縮されます。
【参照】厚生労働省「Q&A~育児休業給付~」|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158500.html
育休期間を延長できる条件
育休期間は延長することも可能です。下記のようなケースに該当する場合は、子供が1歳6カ月(最長2歳)になるまで育休期間を延長できる可能性があるため、育休手当の支給期間も同様に延長されることが期待できます。
<育児休業が延長になるケース>
- 待機児童などの問題で子供が1歳、もしくは1歳6カ月になっても保育所への入所ができない場合
- 子供の主たる養育者が死亡したとき
- 子供の主たる養育者が、負傷・障害等によって子供の養育が困難な状態に陥ったとき
- 配偶者が子供と同居しないことになったとき
- 育休中に新たな妊娠・出産によって、6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産する予定がある。または、8週間の産前産後休暇の期間にかかるとき
なお、子供が1歳6カ月に達した後も育休を延長して取得する場合は、その子供が2歳になるまでのあいだ、育休を延長することも可能です。育休が延長されているときは、保育所に入所できないといった一定の要件を満たしている場合、育休手当の支給期間も同様に延長されます。
また、上記の要件に該当しない場合でも、「パパ・ママ育休プラス」の制度を利用すれば、子供が1歳2カ月になるまで育休を取得し、育休手当を受け取ることもできます。
例えば、子供が1歳になるまで母親が育休を取得し、母親の復職と同時に子供が1歳2カ月になるまで父親が育休を取得した場合、母親と父親はそれぞれ育休手当を受け取ることができます。
【参照】厚生労働省岐阜労働局「育児休業給付金の延長申請について」|厚生労働
https://jsite.mhlw.go.jp/gifu-roudoukyoku/content/contents/000588771.pdf
育休手当給付金はいくら支給されるのか?
育休手当は、いくらくらい支給されるものなのでしょうか。続いては、育休手当給付金の計算方法や計算例、支給限度額について解説します。
育休手当給付金の計算方法
育休手当給付金は、休業を開始した際の賃金に一定の割合を乗じて計算します。具体的な計算式は下記のとおりです。
<育休手当給付金の計算式>
- 育休開始から180日以内:育休手当=休業開始時の賃金日額×支給日数×67%
- 育休開始から181日以降:育休手当=休業開始時の賃金日額×支給日数×50%
休業開始時の賃金日額とは、育休開始前6カ月間の賃金を180日で割った額です。賃金は、残業手当や通勤手当、住宅手当などを含む給与額面を指しています。手取り額ではない点には注意してください。
【参照】厚生労働省 育児休業給付の内容と支給申請手続 │厚生労働省(2023(令和5)年8月1日改訂版)
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001126859.pdf
育休手当給付金の計算例
具体的に給付金の目安が分かるよう、育休手当給付金の計算例をご紹介します。育休手当が1カ月にどれくらい支給されるのか、下記を参考に計算をしてみましょう。
<賃金1カ月30万円の場合の計算例>
- 休業開始時の賃金日額:180万円(30万円×6カ月)÷180日=1万円
- 育休開始から180日以内の1カ月の支給額:1万円×30日×67%=20万1,000円
- 育休開始から181日以降の1カ月の支給額:1万円×30日×50%=15万円
- 1年間育休を取得した場合の総額:20万1,000円×6カ月+15万円×6カ月=210万6,000円
育休手当給付金の支給限度額
育休手当給付金には支給額と、その計算のもとになる賃金の額に限度があります。2024年7月31日までの休業開始時賃金日額の上限額は1万5,430円、下限額は2,746円です。支給日数が30日の場合の支給上限額と支給下限額の例は下表のとおりです。
■賃金額の上限と下限の例
支給率67% |
支給率50% |
|
上限額 |
31万0,143円 |
23万1,450円 |
下限額 |
5万5,194円 |
4万1,190円 |
支給限度額を超えた場合は、育休手当は一律に上限額までとなります。下限額に満たない場合は、一律に下限額まで引き上げられて支給されます。
【参照】厚生労働省 育児休業給付の内容と支給申請手続 │厚生労働省(2023(令和5)年8月1日改訂版)
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001126859.pdf
育休手当支給日の目安
育休手当は、基本的に2カ月分まとめて支給されます。母親の場合、育休は産休期間の8週間が明けてから開始するため、初回給付金の入金は、出産日からおよそ4~5カ月後を目安にしておくといいでしょう。
なお、育休手当給付金の申請期限は、育休開始日から4カ月経過後の月末までです。その期限を過ぎると交付が認められないため注意が必要です。
また、育休手当は1回目の申請だけで支給が続くわけではありません。1回目では育休開始から2カ月分の休業状況を対象にハローワークが審査を行い、振込が行われます。
2回目以降は、基本的には2カ月単位で支給を申請し、休業状況の審査が行われた後に支給額の振込が行われます。
【参照】厚生労働省「Q&A~育児休業給付~」|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158500.html
【参照】
厚生労働省 ハローワーク インターネットサービス │厚生労働省
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_childcareleave.html
育休手当受給時の税金と社会保険
育休手当を受給すると、税金や社会保険の扱いがどうなるかは気になるポイントです。
結論をいうと、育休手当の給付金は非課税扱いとなります。そのため、所得税や復興特別所得税、住民税を納付する必要はありません。
また、育休中に会社から賃金が支払われていない場合は、雇用保険料の納付は不要です。
さらに、健康保険料や年金保険料も申請をすれば、免除となることもあります。免除されるには事業主による年金事務所への申請が必要となりますが、被保険者・事業主の両方の負担が免除されるため、忘れずに申請をしておきましょう。
【参照】マイナビ転職 育休手当(育児休業給付金)とは? 申請方法や受給期間を解説 │株式会社マイナビ(2023年12月21日)
https://tenshoku.mynavi.jp/knowhow/caripedia/153/
育休手当の申請手続き
育休手当を申請するにはハローワークに書類を提出するなど、一定の手続きが必要です。具体的にどのような書類が必要で、どのような流れで申請を行うのか見ていきましょう。
育休手当に必要な書類
育休手当を申請する際には、下記の書類が必要となります。事業主、被保険者ともに必要書類を用意しておきましょう。
<育休手当の申請に必要な書類>
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
- 育児休業給付受給資格確認票・(初回)育休手当支給申請書
- 1・2に記載した賃金の額および賃金の支払い状況を証明できる賃金台帳やタイムカードなどの書類
- 母子手帳など育児を行っている事実を確認できる書類
上記の1~3の書類は、事業主が用意します。育休手当の被保険者の必要書類は4のみです。
【参照】都道府県労働局・公共職業安定所(ハローワーク)「育児休業給付の内容と支給申請手続」|厚生労働省(2023年8月)
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001126859.pdf
育休手当の流れ
育休手当の申請を行う際の基本的な流れは、下記のとおりです。手続きは大きく、5つの流れに沿って行われます。
<育休手当の申請手続きの流れ>
- 被保険者が育児休業の取得を会社に伝える
- 事業主がハローワークに申請に必要な書類を提出する
- 受給資格があると認められたら、育児休業給付支給決定通知書と育児休業給付次回支給申請日指定通知書が事業所に交付される
- 指定口座宛に育休手当が給付される
- 2回目以降は、事業主が2カ月ごとに賃金額や賃金状況を確認できる書類を添えて育児休業給付金支給申請書を提出する
【参照】厚生労働省 育児休業給付の内容と支給申請手続 │厚生労働省(2023(令和5)年8月1日改訂版)
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001126859.pdf
育休手当は健康経営の観点からも有効
育休手当があることを知っていれば、従業員は安心して育児に専念できるようになるでしょう。育児期間が充実すれば、従業員のエンゲージメントも高まるかもしれません。
「マイナビ健康経営」は、人と組織の「ウェルネス(健康)」を総合的にサポートしています。従業員の心身の健康向上をお考えの際には、お気軽にお問い合わせください。
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