福利厚生とは?導入のメリットや導入方法、事例を詳しく紹介

福利厚生とは?導入のメリットや導入方法、事例を詳しく紹介


目次[非表示]

  1. 1.福利厚生とは?導入のメリットや導入方法、事例を詳しく紹介
    1. 1.1.福利厚生とは、企業が提供する賃金以外の報酬、サービスのこと
  2. 2.福利厚生には、法定福利厚生と法定外福利厚生がある
    1. 2.1.法定福利厚生
    2. 2.2.法定外福利厚生
  3. 3.福利厚生の導入で期待できる効果
    1. 3.1.住宅関連 
    2. 3.2.食事関連
    3. 3.3.健康、医療関連
    4. 3.4.育児、介護関連
    5. 3.5.慶弔関連
    6. 3.6.自己啓発関連
  4. 4.福利厚生導入の注意点
    1. 4.1.費用負担が大きい
    2. 4.2.管理コストがかかる
  5. 5.福利厚生の導入形態
    1. 5.1.パッケージプラン
    2. 5.2.カフェテリアプラン
  6. 6.効果的な福利厚生の事例
    1. 6.1.ジークレスト の事例:ゲーム開発に役立つイベントの費用を補助
    2. 6.2.サイバーエージェント の事例:女性向けの福利厚生を充実
    3. 6.3.LINEの事例:従業員の学びを福利厚生でバックアップ
  7. 7.従業員の心身の健康のために、福利厚生を充実させよう

福利厚生とは?導入のメリットや導入方法、事例を詳しく紹介

少子高齢化に加え、働き方や価値観の多様化によって、企業の人材確保はますます困難になっています。コロナ禍をきっかけにワークライフバランスを見直したり、ウェルビーイングを重視した働き方へのシフトを試みたりする人も増えました。

こうした中、企業はさまざまな雇用促進・維持の施策を展開しています。中でも多くの企業が取り組み、注目を集めているのが福利厚生の充実です。

本記事では、福利厚生の概要や導入のメリットのほか、導入方法などについて詳しく解説。福利厚生を導入する際の注意点や、実際に成果につながっている企業の事例も併せてご紹介します。

福利厚生とは、企業が提供する賃金以外の報酬、サービスのこと

福利厚生は、企業が「従業員の労働の対価」として提供する賃金以外の報酬、サービスのことです。就職や転職を希望する人にとっては、企業の従業員に対する扱いや方針、働きやすさを見極める指標のひとつになっています。

近年、「自分らしく働きたい」「仕事以外の時間も充実させたい」という人々の志向の高まりとともに、勤務時間や年収、勤務地といった雇用条件だけでなく、福利厚生を重視して企業選びをする人が増えました。一般的に、中小企業よりも大企業のほうが採用に有利だといわれますが、福利厚生を整えることで採用競争を高めれば、企業規模を超えて優位に立つことができるかもしれません。
福利厚生を充実させれば、住宅手当や食事手当など、生活費に直結する福利厚生で従業員の経済的負担を軽減することも可能です。また、スポーツジムの会費補助や人間ドックの費用負担といった制度で従業員の健康に配慮することで、従業員のモチベーションがアップすることも期待できます。

採用や雇用の維持のため、福利厚生の充実は有効だといえるでしょう。すでにある程度の福利厚生を用意している企業も、時代に合わせた内容の見直し・刷新を図ることで、さらなる雇用を促進できる可能性があります。一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)が公表した「2019年度福利厚生費調査結果報告」によれば、企業の福利厚生費は年々増加傾向にあることが分わかっています。

【参照】一般社団法人日本経済団体連合会「第64回 福利厚生費調査結果報告  」|一般社団法人日本経済団体連合会(2020年12月)
https://www.keidanren.or.jp/policy/2020/129.html

【参照】Career TANQ「福利厚生とは?知っておきたい制度や意外な制度をご紹介!」|株式会社マイナビ(2022年5月)
https://job.mynavi.jp/career_tanq/articles/?id=356


福利厚生には、法定福利厚生と法定外福利厚生がある

福利厚生の種類は、大きく「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」の2種類に分けられます。それぞれどのように定義されているのか確認していきましょう。

法定福利厚生

法定福利厚生は、法律によって導入が義務づけられている福利厚生です。いわば、すべての企業が最低限実施している福利厚生制度であり、導入していない場合は罰則の対象になります。

具体的には、下記の6つが法定福利厚生に該当します。

  • 健康保険
    健康保険は、従業員の病気やケガ、出産、死亡に際して医療給付や手当金を支給します。保険料は、会社と従業員が半額ずつ負担します。

  • 介護保険
    介護保険は、要介護者を支援するための保険です。保険料は40~64歳までの健康保険加入者(第2号被保険者)に支払義務があり、会社と従業員が半額ずつ負担します。

  • 厚生年金保険
    厚生年金保険は、会社退職後の老後資金になる公的年金の1つです。企業に雇用されるすべての人に加入義務があり、保険料は会社と従業員の折半です。

  • 雇用保険
    雇用保険は、労働保険の1つ  で、失業手当の給付や就職支援、育児休業給付などを受けるために必要です。保険料は企業が3分の2、従業員が3分の1を負担します。

  • 労災保険
    労災保険は、就業中の万が一の事故に対して補償を行うための保険です。保険料は全額を企業が負担します。

  • 子ども・子育て拠出金
    子ども・子育て拠出金は、企業に納付義務がある税金で、児童手当など仕事と子育ての両立支援事業にあてられます。従業員による負担はなく、会社が全額を負担します。

法定外福利厚生

法定外福利厚生は、法律による導入義務がなく、企業が任意で導入する福利厚生です。

少子高齢化が加速し、子供や高齢者へのサポートが喫緊の課題とされる日本では、健康保険・介護保険・厚生年金保険の保険料の引き上げに伴って法定福利厚生費が増加しており、一方で法定外福利厚生費は減少しています。

しかし、法定外福利厚生の実情は多様化しており、従業員の企業への期待値が各項目の費用増減に反映されるといわれています。

高度経済成長期からバブル期にかけては保養施設などレジャー系の人気が高まったこと、健康意識が高まる現代ではスポーツジムの費用補助が流行したことなどは、その代表的な例です。

最近では、ウ ェルビーイングや健康経営への関心の高まりを反映して、最新テクノロジーで従業員の健康管理をサポートする福利厚生も増加しています。

福利厚生の導入で期待できる効果

ここからは、一般的によく導入されている福利厚生を種類ごとに紹介していきます。それぞれの概要と期待できる効果を確認していきましょう。

住宅関連 

住宅関連とは、社有住宅や借り上げ社宅、独身寮、賃貸住宅の家賃補助、住宅ローンの金利補助など、従業員の「住まい」に関する費用をサポートする福利厚生です。固定費である住居費を会社が一部負担してくれることは、従業員にとって大きなメリットとなるでしょう。

法定外福利厚生の中でも最も多くを占めているのが住宅関連の費用であり、ニーズの高さがうかがえます。住宅関連の福利厚生が充実すれば、エンゲージメント向上や離職防止も期待できます。ただし、 企業の負担が大きいことや、人々の住宅に関する意識が多様化していることから、全体としては減少傾向にあります。

食事関連

食事関連の福利厚生には、社員食堂での食事提供、弁当の提供、ランチ代支給、軽食の提供などがあります。日々の業務に追われて食事をおろそかにしがちな従業員の健康管理につながるほか、従業員同士のコミュニケーション促進にも役立つでしょう。食事に関する補助は、健康経営の観点からも推奨される福利厚生の1ひとつです。

健康、医療関連

食事とは別の観点から、従業員の健康に寄与するのが健康、医療関連の福利厚生です。例えば、健康診断の実施、予防接種代の補助、スポーツジム代の補助などが挙げられます。
中でも、健康診断の受診は、健康経営のベースでもあります。「健康診断受診率100%」は、2022年度の健康経営銘柄、および大規模法人部門の健康経営優良法人の認定要件と、中小規模法人部門の認定要件でもあります。

健康、医療関連は、従業員の生産性向上に加え、メンタルヘルスの不調回避による休職・離職の防止にもつながる福利厚生であり、導入による効果は高いです。

育児、介護関連

育児や介護関連は、ライフスタイルが変化しても働きたい有能な従業員の離職を防ぎ、女性活躍にもつながる福利厚生です。企業内保育所の実施や時短勤務の導入、介護休暇などが考えられます。
こうした福利厚生は、企業選びの際にも重視される傾向があり、採用率アップを目指す上で必ず充実させたい項目です。

慶弔関連

慶弔見舞金は、日本型雇用の中で従業員と家族のような関係を築いてきた日本企業ならではの福利厚生です。結婚、出産、育児、介護、永年勤続、定年といったライフイベントごとの見舞金・給付金があり、従業員だけでなく従業員の家族まで対象になることも珍しくありません。

終身雇用制度が崩壊しつつあるといわれる今でも、慶弔関連の福利厚生は従業員との良好な関係の維持、信頼感向上、職場定着などに役立ちます。

自己啓発関連

リスキリングなど、常に自分のスキルと能力を磨き続ける努力が重視される今、自己啓発関連の福利厚生はとても重要な項目です。具体的には書籍代の補助や、セミナー代の補助などが挙げられます。

成長意欲のある従業員にとって、学ぶ費用を企業が負担してくれることは大きなメリットです。企業に対する信頼感の醸成や仕事の質の向上、従業員の自信とモチベーションのアップにもつながるでしょう。また、従業員のキャリアを大切にする企業として、対外的なイメージも向上します。

福利厚生導入の注意点

福利厚生を導入する際には注意点もあります。福利厚生の内容は、下記の2点を踏まえた上で検討しましょう。

費用負担が大きい

福利厚生を導入するにあたって、最初に考えなければならないのは費用です。当然ながら、福利厚生を充実させればそれだけの費用がかかります。他社との差別化を図るために独自の制度を導入したり、制度を増加させたりすればなおさらです。

前述のとおり、導入が義務づけられている法定福利厚生費は年々増加していることもあり、法定外福利厚生費にそれほどコストをかけられない企業も多いでしょう。そのため、福利厚生の導入によって得られる採用効果や離職抑制効果等のメリットを吟味し、導入に際して必要な費用も十分に検討した上で最終決定することをおすすめします。

なお、福利厚生の整備・維持にかけた費用は、下記の3点を満たせば「福利厚生費」として経費計上でき、法人税の節税につながります。

<福利厚生費として経費計上できる条件>

  • 賃金ではないこと
  • 全従業員が対象であること
  • 社会通念に照らして妥当な金額であること

管理コストがかかる

福利厚生を導入すると、企画・運営の手間がかかります。一般的に、福利厚生を管理するのは人事部や総務部であり、人的リソースが不足していると既存従業員の負担が増加して、不満につながりかねません。人員配置は適切に行い、業務負荷の軽減を図りましょう。
社内でのリソースの融通や、新規採用が難しい場合は、福利厚生の運営・管理を代行サービスに一任するのも有効です。

福利厚生の導入形態

福利厚生の導入形態には、「パッケージプラン」と「カフェテリアプラン」があります。ここでは、それぞれの形態の概要や、メリット・デメリットなどについて見ていきましょう。

パッケージプラン

パッケージプランは、代行業者があらかじめ用意した福利厚生サービスの中から、従業員自身が取捨選択して利用する仕組みです。料金は、従業員1人あたりの月額定額制です。

パッケージプランは、比較的コストを抑えて質の高い福利厚生を導入でき、かつ社内担当者の業務負担を軽減できるのがメリットです。ただし、従業員のニーズに合ったカスタマイズができず、他社との差別化が図りにくいため、採用強化の材料としてはインパクトに欠けるでしょう。

カフェテリアプラン

カフェテリアプランは、従業員に一律的にポイントや補助金を付与し、その範囲内で自由に福利厚生を選択してもらうシステムです。従業員は自分のライフスタイルや価値観に合った福利厚生を選べるため、満足度が向上します。また、他社との差別化にも役立つでしょう。
ただし、パッケージプランよりはコストがかかること、ポイントに有効期限があることなどには注意が必要です。

効果的な福利厚生の事例

最後に、福利厚生の強化によって、従業員満足度や採用率アップといった成果を出している企業の事例をご紹介します。各企業がどのような工夫をしているのか見ていきましょう。

ジークレスト の事例:ゲーム開発に役立つイベントの費用を補助

女性向けスマートフォンゲームの開発・運営を手掛ける株式会社ジークレストは、自社の事業強化にも期待できる福利厚生を「STYLEプラス」として導入しています。具体的な内容は、下記のとおりです。

  • 推しメン休暇
    アニメやマンガ、ゲームのキャラクターや声優など、従業員のイチ推しメンバーの記念日(誕生日やライブなど)に休暇を取得できる。活動費として5,000円を支給。

  • キャラクターコンテンツイベント参加補助
    キャラクターコンテンツ開発に役立つ、会社指定のイベントへの参加費用を支給。

【参照】株式会社ジークレスト「UNIQUE SYSTEMジークレスト独自の制度」|株式会社ジークレスト 
https://www.gcrest.com/recruit/unique-system/

サイバーエージェント の事例:女性向けの福利厚生を充実

株式会社サイバーエージェントは、全社向けの多様な福利厚生のほか、女性向けの福利厚生を「女性活躍促進制度 macalonパッケージ」として提供しています。その中でも代表的な「エフ休」は、女性特有の体調不良に対して、月1回の特別休暇を認めるものです。
休暇の呼び方自体を工夫することで用途がわからないようにし、取得を推奨しています。

【参照】株式会社サイバーエージェント「福利厚生」|株式会社サイバーエージェント 
https://www.cyberagent.co.jp/sustainability/info/detail/id=26074

LINEの事例:従業員の学びを福利厚生でバックアップ

LINE株式会社は、健康や育児、学びなどに充実した支援をしています。語学力アップ、スキルアップに対しても、下記のような制度を福利厚生として導入しています。

<従業員の学びに対する福利厚生>

  • 就業時間前後に英語、韓国語、日本語の語学講座を開講。5割以上出席・受講すれば費用は全額会社負担。
  • TOEICの社内試験の機会を提供。受験料は全額会社負担。

また、業務を推進するために必要なスキル、あるいは今後を見据えて身につけておくべき知見などを習得したい従業員に対しては、外部のビジネス研修の受講によるサポートも行われています。

【参照】LINE株式会社「福利厚生と各種制度」|LINE株式会社 
https://linecorp.com/ja/career/benefits

従業員の心身の健康のために、福利厚生を充実させよう

福利厚生の充実は、従業員が健康で、存分に能力を発揮できる環境の構築につながります。自社の課題を踏まえて、従業員のニーズに合った福利厚生や、自社の成長につながる福利厚生の導入を進めましょう。

マイナビ健康経営では、従業員の健康促進、生産性向上、人材定着につながる福利厚生として「ウェルネスサポート」をご用意しています。福利厚生の充実を図る際には、ぜひご検討ください。

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<監修者>
丁海煌(ちょん・へふぁん)/1988年4月3日生まれ。弁護士/弁護士法人オルビス所属/弁護士登録後、一般民事事件、家事事件、刑事事件等の多種多様な訴訟業務に携わる。2020年からは韓国ソウルの大手ローファームにて、日韓企業間のM&Aや契約書諮問、人事労務に携わり、2022年2月に日本帰国。現在、韓国での知見を活かし、日本企業の韓国進出や韓国企業の日本進出のリーガルサポートや、企業の人事労務問題などを手掛けている。



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