経営者候補はどのように人材育成する?選定方法と育成方法を紹介
企業の未来を守るには、時代に即した事業を展開できる人材の育成が必要です。将来の経営者候補である経営人材について、その必要性や選定方法、育成方法などを解説します。
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- 1.経営者候補はどのように人材育成する?選定と育成方法を紹介
- 2.経営者候補である経営人材の育成で考えるべき目的・目標・課題とは?
- 3.経営人材が必要な理由とは?
- 4.経営人材の育成の現状と企業内にある育成を阻む壁
- 4.1.育成すべき人材を選べない
- 4.2.経営人材の育成を阻む企業の体質
- 5.経営人材に求められる資質
- 5.1.タフな精神力を持っている人材
- 5.2.前向きな思考を持つ人材
- 5.3.冷静な判断力を持つ人材
- 5.4.先見性のある人材
- 5.5.柔軟性を持った人材
- 5.6.発想力が高い人材
- 6.経営人材を育成するプロセス
- 7.経営人材育成に必要な取り組みの流れ
- 7.1.1. どのような人材をいつまでに育成するかを決める
- 7.2.2. 候補者を選抜する
- 7.3.3. 候補者を育成する
- 8.経営人材の育成成功に必要な5つのポイント
- 8.1.1.経営者が積極的にコミュニケーションをとる
- 8.2.2.合理的な判断にもとづいて人材を選定する
- 8.3.3.計画的な配置で積極的に機会を与える
- 8.4.4.精神面のケアをする
- 8.5.5.選抜されなかった従業員にも気を配る
- 9.時代の変化に対応できる経営人材を育成しよう
経営者候補はどのように人材育成する?選定と育成方法を紹介
近年、日本の企業の寿命が次第に短くなってきています。かつて、企業の寿命は30年といわれていましたが、現在は中小企業の約3割が10年で、約5割が20年で廃業している状況です。グローバル化やIT化など、ビジネスの環境が大きく変化する中で、企業を継続させていくためには、時代に即した事業を展開できる経営人材の継続的な育成が欠かせません。
ここでは、将来の経営者候補となる経営人材について、その必要性や選定方法のほか、具体的な育成方法を詳しく解説します。
経営者候補である経営人材の育成で考えるべき目的・目標・課題とは?
経営人材とは経営者候補となる人材で、企業と事業が進むべき方向を定め、正しく舵を切ることができる人です。「目的」「目標」「課題」の3つを設定する力と、経営資源である「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」を動かす権限を持ち、企業の成長に深く関わります。
では、経営人材を育成する上で、企業が再確認すべき目的、目標、課題とは何かを見ていきましょう。
自社が目指すべき最終到達点である「目的」
自社が目指すべき最終的な到達点を示すのが目的です。企業が活動を継続する上で利益を出すことは不可欠ですが、自社の利益を追うだけでは社会に必要とされず、やがて淘汰されてしまうでしょう。目的を設定する際には、自社が提供できる価値を踏まえて、何のために存在し、社会に対して何をなすべきかを考える必要があります。
目的の多くは、社会に対する考えを示す「経営理念」、社会で何を実現したいかを表現した「ミッション」、ミッション達成の先にある未来を表す「ビジョン」といった形で言語化されています。
目的を達成するための具体的な指標である「目標」
目標は、目的を遂げるための途中経過として設定する、具体的な指標です。例えば、「お客様のリピート率を創業以来最高の数値まで上げる」ことが目的なら、「お客様に喜んでいただくために何をするか」を示さなくてはなりません。
そのためには、「1年で業界内のシェアを◯%まで引き上げる」「商品の販売価格を前年比◯%ダウンさせて、利益も上げる」といった、具体的な数値を目標として設定し、お客様に喜んでいただく機会を増やしていく必要があります。
目的と目標を達成する上で障壁となる「課題」
目的と目標を達成する上で、障壁となるのが課題です。「求める人材が採用できない」「必要な人材が育たない」「ブランド力が弱い」「営業力が弱い」といった課題が代表的です。中でも、人材育成の難しさは、どの企業にも共通してある課題といえるでしょう。
事業成長のためには経営人材の育成が必須ですが、経営人材のみに注視しても、組織の運営は改善し難いです。経営人材とよく似た言葉である、「幹部人材」の育成も必要となるからです。
幹部人材は、経営人材が示した目的に向かって目標達成に努め、課題を解決して、実際に事業を推進していく人のことです。経営人材が社長、副社長、専務、常務といった経営に直接的に関わる層を指すのに対して、幹部人材は中間管理職にあたるリーダー、マネージャー層にあたります。
一般的に、経営人材は「問いを立てる人」、幹部人材は「問いに答える人」ともいわれ、それぞれの領域で力を発揮しうる組織を作るという課題を乗り越えることで、事業は成長をしていくことができます。
経営人材が必要な理由とは?
経営人材は、企業と、企業で働く従業員の未来を守るために必要な存在です。その理由の大きなひとつに、時代の変化が挙げられます。
戦後の高度経済成長期のような時代に経済が発展し続け、経営環境に大きな変化がない状況下では、既存事業の知見とノウハウに長けた人材が必要とされていました。しかし、グローバル化やIT化が急速に進み、ビジネスを取り巻く環境が激しく移り変わる現代においては、過去の成功体験にとらわれた途端に、世の中の流れに取り残されてしまいます。近年、倒産した企業の中に、老舗と呼ばれる企業が多く含まれていることからも、世の中の流れをつかむことの重要性は明らかです。
経済学者のピーター・ドラッカーは、著書「未来への決断」において、「事業定義のなかには、長く生き続けるきわめて強力なものもある。しかし、人間がつくるものに永遠のものはない。(略)事業定義も、やがて陳腐化し、実効性のないものになる」と述べています。
今のビジネスには、常に変化する時代に対して、戦略的かつ実行力をもって対応できる資質を持った人材が必須です。現代において永続的に成長する企業と、そうでない企業を分かつのは、事業の失速を冷静に見極める「目」と、失速に対して柔軟に新たな事業を開拓できる「行動力」を持っているか否かだといえるでしょう。
この目と行動力を持つ人材こそが、経営人材です。
経営人材の育成は、企業と、企業で働く従業員の未来を守るために必要不可欠な投資といえます。
【参照】ピーター・ドラッカー「未来への決断―大転換期のサバイバル・マニュアル」|ダイヤモンド社(1995年9月)
経営人材の育成の現状と企業内にある育成を阻む壁
続いては、企業における経営人材の育成がどのように進んでいるかを見ていきましょう。
経済産業省が上場企業の経営人材育成責任者および代表者、CEOを対象に行った「経営人材育成に関する調査結果報告書」によれば、将来の経営人材の確保・育成に取り組んでいる企業は過半数に上る一方、育成の状況について「順調」と答えた企業は7.2%で、「どちらかといえば順調」を合わせても37.6%と、半数を大きく下回る結果でした。
このことから、多くの企業が経営人材の育成を重要課題と捉えているにもかかわらず、思うようには進展できていない状況がうかがえます。
では、なぜ経営人材の育成に行き詰ってしまう企業が多いのでしょうか。その理由は、大きく2つ考えられます。
育成すべき人材を選べない
日本の企業では、育成すべき経営人材の選定の段階で足踏みをしている状況が目立ちます。
経済産業省が発表した「経営人材育成に関する調査結果報告書」によると、「経営人材育成の目的が明確になっている」については9割以上、「自社の価値観や理念、ビジョンと紐づける形で、自社ならではのあるべき経営人材像を明確にしている」については7割以上の企業が同意していますが、選抜する人材の人数およびポストに対する人材要件や職務についてまで明確化している企業は、半数にも及びませんでした。
「どのような人材が必要か」を人材像として把握してはいても、それを具体的な要件に落とし込めていない企業が多く、育成すべき人材を選ぶ段階で停滞をしている企業が多いことがわかります。
【参照】経済産業省「経営人材育成に関する調査」|経済産業省(2017年)
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/20170331001.html
経営人材の育成を阻む企業の体質
日本の企業は、新たなポストを作るフレキシブルさに欠けているようです。経営人材を育成するには、適切な人材を選抜し、育成プランやサポートプログラムを実施した上で、成長につながる仕事を提供し、実践を通じた学びを促す必要があります。
しかし、そのための異動・配置の段階において、若手の優秀な人材を登用するためのポストを空けることができなかったり、選抜人材が所属している部署が戦力低下を懸念して人材を手放そうとしなかったりといった壁があり、育成が進まないというケースに陥っています。
上記の理由から、経済産業省は2017年に公表した「企業価値向上に向けた経営リーダー人材の戦略的育成についてのガイドライン」で、経営人材を育成するにあたっては「育成対象とする経営リーダー人材の明確化」と「経営リーダー人材育成戦略の策定」に取り組む必要があると指摘しています。
【参照】経済産業省「企業価値向上に向けた経営リーダー人材の戦略的育成についてのガイドライン」|経済産業省(2017年)
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/tayou/keieileader.html
経営人材に求められる資質
経営人材として活躍できる資質がある人材は、どれかひとつの能力に長けている人より、多様な能力を複合的に有している人です。続いては、経営人材を選抜するにあたって、重視すべき資質についてご紹介します。
タフな精神力を持っている人材
経営人材に向いている資質として、タフな精神力は欠かせません。企業は景気や同業他社の動向を受けて状況が左右されることも多く、多少のことでは動じない精神力が求められます。ちょっとしたことで気持ちが揺れ動きやすい人、自分の機嫌をコントロールできない人は、経営人材には不向きです。
そもそも、登用を望む多くの従業員の中から経営人材として選ばれることには、賞賛や羨望だけでなく、周囲からの非難や嫉妬が付き物です。いわれのない批判などにも惑わされることなく、与えられた環境下で粛々と仕事に邁進できる、タフな精神力を持った人材を選抜していきましょう。
前向きな思考を持つ人材
経営人材には、前向きな思考が求められます。企業の進むべき方向性を示す人材がネガティブ思考では、部下は不安を抱いてしまいます。経営人材は、ポジティブな言葉と態度でチームを奮い立たせなくてはなりません。
部下の信頼を集め、困難な状況下でも一丸となって立ち向かおうとする風土を作るには、「この人なら何とかしてくれる」「この人についていけばきっと大丈夫だ」と思わせる人間的な魅力が必要です。常に明るくエネルギッシュで、周囲を牽引していく力にあふれていることは、経営人材に欠かせない資質だといえるでしょう。
冷静な判断力を持つ人材
経営人材には、冷静な判断力も求められます。企業を取り巻く環境は厳しく、生き残りをかけて熾烈な競争が続く業界も少なくありません。こうした中で、継続的に利益を生み出せる状態を作るにあたって、周辺環境から冷静に進退を決定する判断力は非常に重要です。
部下や、企業の意見を尊重する姿勢は大切ですが、「思い入れのある事業だから」「◯◯さんが努力して提案してくれたから」といった感情論は、判断を誤らせる要因になります。たとえ冷徹だと批判を受けたとしても、企業のためになるかを優先して物事を決める力が経営人材には必要です。
先見性のある人材
先見性は、今の時代だからこそ経営人材に強く求められています。IT化やグローバル化、さらには新型コロナウイルス感染症の拡大によって、組織やビジネス環境、さらには社会そのものの将来の予測が難しい時代になりました。こうした状況はVUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧さ)と呼ばれ、先行きが不透明で将来予測が困難な状態を表しています。
不確かな時代に、企業が進むべき道を正しく示し、将来的に企業の価値を高める可能性が高い事業を提案するために、固定観念や過去の成功体験にとらわれない先見性が経営人材には求められます。
柔軟性を持った人材
柔軟性も、経営人材には必須です。昨日まで最善と思われていた策が今日には最悪の打ち手になってしまうこともある時代に必要なのは、想定外の事態が起きたとき、柔軟な思考で次の一手を考えられる経営人材です。
同時に、自分の後継となる人材を見つけ出し、育成することも、経営人材の大切な役割といえます。社内の人材登用においても、性別や年齢にとらわれることなくフラットに人材の能力を見ることができる、柔軟な思考力が経営人材には備わっている必要があります。
発想力が高い人材
高い発想力もまた、経営人材に必要な資質です。他社にない強みを育てたいとき、一見すると突飛に思える発想が突破口になることがあります。既存事業の延長線や業界の常識から一歩外に踏み出し、できるわけがないと周囲から思われるような発想でも臆せずに広く意見を募ることができたら理想的です。そんな勇気を持った人こそが、現代の経営人材にふさわしいといえるでしょう。
経営人材を育成するプロセス
必要性を実感していてもなかなか実行に移せなかったり、実行してはいるものの思うような成果が出ていなかったりすることが経営人材の育成の難しさです。しかし、経営人材育成のステップや、求められる資質を踏まえてプロセスを仕組み化すれば、決して難しいことではありません。
下記のプロセスを仕組み化し、確実に実行すれば、育成をスムーズに進めることができるでしょう。
社内の人材のスキルや能力を把握して評価する
経営リーダー人材の育成は、社内の人材のスキルや能力を把握し、評価することから始まります。優秀な若手人材と経営層が直接話をしたり、全社から事業アイディアを募集したりして、潜在的な能力を見いだす機会を作り、その評価を共有しましょう。第三者機関に、人材の資質の見極めを依頼するのもひとつの手です。
評価の結果をもとに、経営人材としての可能性を秘めた人材を選抜する
経営リーダー人材は、社内の評価基準を上回った人材や、外部機関の査定で高い評価を得た人材から選抜し、育成対象とする方法が一般的です。
選抜した人材の育成計画を策定し、環境を整備する
経営リーダー人材として選抜した対象者には、部署の配置を含めて、育成計画を策定します。経営人材を育成することの重要性について社内のコンセンサスも得て、選抜した人材の成長を後押しできるような環境を作ってください。
経営人材育成に必要な取り組みの流れ
ここからは、経営人材育成に必要な取り組みの流れを、具体的に解説します。人材要件や育成期間、候補者の選抜方法、研修内容、成長に対する評価方法などを、細かく決めていきましょう。
1. どのような人材をいつまでに育成するかを決める
まずは、経営人材育成のゴールを設定してください。「自社にとって理想的な経営人材が育つこと」をゴールとすると、最初に決めるべき要素は下記の2つとなります。
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経営人材の要素を決定する
経営人材育成のために、育てたい人材や必要としている人材のイメージを言語化して社内で共有してください。そして、社内にどのような人材がいるのか、能力やスキル、人間性について広く情報を収集していきます。注意したいのは、「能力のある人材」「優秀な人材」は、あらゆる部署に存在していることです。「IoTに力を入れたい」「まったく新しい事業分野に進出したい」「早期に海外に拠点を作りたい」といった、企業が目指している方向性に沿って必要な資質を絞り込み、人材要件に落とし込んでください。
このとき、どの企業にも通用する人材要件ではなく、自社ならではの要素を盛り込んだ人材要件を作ることを意識すると、より適切な人材を選出できる可能性が高まります。経営理念やビジョン、ミッションなどを織り込んで作成するといいでしょう。作成した人材要件は、人材の選出に関わる人全員で共有し、選出の基準にぶれが出ないようにします。 -
いつまでに育てるかを決める
人材要件が定まったら、育成のゴールを決めます。どれだけの人材を、どのくらいの期間研修に割り当てることができるかを検討します。
また、外部で行う研修をどこに依頼するかなど、時間と予算を加味して無理のないスケジュールを組んでください。
2. 候補者を選抜する
次に取り組むのは、候補者の選抜です。前項で定めた人材要件に沿って、社内から候補者を選抜しましょう。要件に沿った人材を選出する際には、下記について取り組んでみてください。
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複数の関係者による面接を実施
作成した人材要件をもとに、経営者や人事部、経営人材育成の主導者などの関係者が人材を選抜します。人材要件がないと、それぞれの個人の主観が反映されてしまうため、結論にぶれが生じる可能性があります。
しかし、人材要件を確立していれば、選抜の過程で追加したい要件がわかった場合など、スムーズに有益な情報を共有・対応できるメリットがあります。 -
360度評価を導入する
360度評価は、所属する部署の上長からのみ評価される従来の評価制度とは異なり、部署をまたいだ同僚、部下など、さまざまな立場の人が多面的に評価する手法です。経営人材を選定する関係者は、候補者の上司にあたる人が多くを占めているでしょう。360度評価は、上司の目からは見えにくい能力や、周囲からの信頼度なども測れるため、経営人材の選定における視点の漏れを防げます。
ただし、人物の評価に慣れていない人が行う場合、主観的・感情的になりやすいため、実態に即した評価が行われるよう、360度評価の方法と目的を事前に理解してもらうことが大切です。
3. 候補者を育成する
経営人材を選抜したら、育成のスタートです。経営人材に身につけてほしいスキルや経験に沿って、研修プログラムを行ったり、人材の入れ替えを行ったりして、育成するようにしてください。
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研修プログラムを行う
研修プログラムには、座学と実践があります。座学では、経営の基礎知識、経営にかかわる人に必要なリテラシーといった最低限の知識を学びます。
実践型研修では、新事業の立ち上げ、海外法人への出向など、「タフアサインメント」と呼ばれるハードルの高い課題へ挑戦するミッションを与えることも検討してください。大手企業からベンチャー企業への企業間留学や在籍型出向など、まったく異なる環境下への異動も選択肢のひとつです。また、経営トップが集まる会議への参加は、必須といえるでしょう。
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候補者の成長を評価し、別部署へのローテーションや人材の入れ替えを行う
経営人材候補者の育成において最も重要なのは、「放置をしない」ことです。いかに強靭な精神力を持つ人材であっても、タフな状況下に放り込まれたままでは、目的や意欲を見失ってしまう可能性もあります。関係者は経営人材に対して、「何を期待して配置しているのか」「どのような成果が上がれば次のステップに進めるのか」をしっかり伝え、定期的にフォローもしましょう。
同時に、成長の度合い、変化の様子を客観的に評価することも重要です。座学では高い能力を発揮していたにもかかわらず、タフアサインメントに耐えきれなかったり、現場で周囲の信頼を得られなかったりして、成長が停滞している場合は、配置換えを検討しなくてはなりません。
配置換えをしても状況が好転しなければ、別の候補者への再考を検討する必要があります。
経営人材の育成成功に必要な5つのポイント
経営人材の育成を成功させるには、どのようなことを意識すればいいのでしょうか。ここからは、経営人材の育成を成功させる上で、育成に関わる関係者が意識すべきポイントを5つご紹介します。
1.経営者が積極的にコミュニケーションをとる
経営人材育成は、経営者の積極的なコミュニケーションが成功のカギとなります。
登用する経営人材は、経営層に近い管理職とは限りません。海外進出や、時代に合った新事業創出を前提とした経営人材の育成の場合、若手の従業員にふさわしい人材がいることもあるでしょう。
こうした場合、経営者は管理者層を通して従業員の情報を吸い上げ、その人となりやスキルを把握して登用を決めることになりますが、できれば経営者みずからが経営人材候補とコミュニケーションをとるほうが望ましいです。経営者に直接声をかけられた従業員は、「期待をされている」と感じます。能力のある人材にさらに活躍してもらうためにも、経営者の積極的な関与は効果的です。
2.合理的な判断にもとづいて人材を選定する
経営人材の選抜には、合理的な判断が求められます。「年齢的にそろそろ引き上げてあげないと…」「創業当初からのメンバーだから、これからも活躍してほしい」といった感情論は不要です。年功序列や、経営層の思い入れといった主観が含まれると、人材要件の信頼性は低下します。
人材を選定する基準は、常に合理的な判断にもとづいて作成しましょう。経営人材を選抜する際には、誰に登用の理由を問われても納得できる答えを返せるよう、客観的な基準を確立してください。
3.計画的な配置で積極的に機会を与える
登用した経営人材には、計画的な配置で積極的に活躍の機会を与えましょう。経営の基礎知識を伝えただけでは、次世代リーダーは育ちません。また、1つのポジションに長く在籍させることは、特定分野の専門家を育成することには適していても、多様なスキルが求められる経営人材の育成には不向きです。
経営人材には、不採算事業の黒字化や事業の海外進出など、これまでの経験やスキルが通用しない環境での経験をできるだけ多く積ませてください。
4.精神面のケアをする
経営人材を育てる上で、精神面のケアは必須です。これまでと異なる過酷な環境下での経験を積ませることは非常に重要なポイントであり、経営人材が自分の強みや弱みを自覚して、自身の強化すべきスキルを理解するきっかけになります。
一方で、そうした刺激的な経験の積み重ねが、経営人材のストレスになることも確かです。経営人材のストレスを放置し、心身に不調をきたしてしまっては本末転倒です。経営人材の精神面のケアをしなかったことにより、人材選定のやり直しが必要となると、多大なコストと時間が無駄になってしまいます。
定期的な面談など、経営人材の状態をモニタリングする機会を設け、勤怠や業務遂行能力、業務中の様子などをしっかりチェックしましょう。
5.選抜されなかった従業員にも気を配る
選抜された従業員と同程度の成績を残している従業員や、候補として選抜されながらも最終的に登用が見送られた従業員、育成プログラムの途中で不適格とされた従業員は、少なからずショックを受けて仕事に対するモチベーションが低下することが考えられます。
そのようなときは、選抜の基準を説明したり、彼らの今後のキャリアプランを示したりして、「今後もあなたに期待していますよ」とメッセージを伝えましょう。
時代の変化に対応できる経営人材を育成しよう
経営者にとって重要なのは、社会に必要とされ、安定的に成長できる企業を作り、従業員に安心して働ける環境を提供することです。そのためには、時代の変化にいち早く対応し、必要な改革を推し進めることができる経営者候補の次世代リーダーを継続的に育成し、事業基盤を受け継がせていくことが重要です。
次世代リーダーの育成手法としては、在籍型出向や企業間留学の活用も有効的ですので、それらも上手に取り入れてみてはいかがでしょうか。
選抜された従業員だけでなく、選抜されなかった従業員にも気を配り、各人の個性に合った活躍の場を与える総合的な人材育成を採用して、経営人材を育て上げていきましょう。
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